気になる新型コロナウイルスの生存時間
よく尋ねられる質問として「新型コロナウイルスはどれくらいエアロゾル状態で、あるいは各物体上で存在し続けるのか」というものがあります。
今回、それに回答する論文と、その著者の英語インタビューを見つけました。
医師の立場からわかりやすく解説します。
エアロゾルや各物体上での生存時間
この問いに答えた論文は下記です。
Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1
プレプリント(論文下書き)が公表されて10日も経たないうちに有名医学雑誌のニューイングランドジャーナルオブメディシン(NEJM)に掲載され、真に力がある論文はこうなのだと感じさせました。
下記がそのデータです。
エアロゾル…3時間
プラスチック…72時間
ステンレス…72時間
銅…4時間
ダンボール…24時間
上記の数字が各メディアで紹介されました。
ただし上記はあくまで存在が確認されたという時間で、ウイルス量自体はもっと早く減じており、半減期は下記のようになります。
【各状態での半減期】
エアロゾル…約1.1〜1.2時間
プラスチック…6.8時間
ステンレス…5.6時間
銅…0.8時間
ダンボール…3.46時間
時間に比例して低下するというよりは、最初の数時間で大きく減じることがわかります。
そのため、時間が経っても高い感染性があるかどうかは不明確ということになりますね。
ちょっとでも吸ったり触ったりすると伝染るのか
先ほどの論文が日本語の記事で紹介されると、不安の声があがりました。
すなわち、エアロゾルを吸ったり、物体に付着したウイルスを触ったりすると容易に感染すると考えてご心配される方が出たのですね。
こういう時に英語メディアはさすがだと思うのは、しっかりと論文著者へインタビューしているのですね。
livescience.comというサイトが論文の共著者であるDylan Morrisさんに尋ねた記事を掲載しています。
そこに掲載されている次の内容が参考になりますね。
人に感染させうるウイルス量は不明確
まずウイルスが生存していれば、触るだけですぐうつるのか、という点。
これに関して、モリスさんは次のように答えています。
「人間に高い確率で感染させるために実際に必要なウイルスの量も、荷物に触れたときにどれほど容易にウイルスが手に移行するかもわかりません」
例えば、プラスチックやステンレスで最長72時間ウイルスが残存したとしても、それを触ったとして、そこから手に移行するのか、そしてどれだけのウイルス量が実際にあれば人に感染させうるのか、それははっきりしないということなのですね。
このようなニュースが出ると、私たちは容易に数字をひとり歩きさせて考えてしまいます。
72時間なり、3時間なりという時間にとらわれて、それだけの間は危険だと感じてしまうのですね。
ただモリスさんが言っているように、ウイルスが存在する=感染する、ではありません。
手に移行するのか、そして移行したとしても実際どれだけのウイルス量が存在すれば罹患するのか、それはわからない、ということですね。
もちろん用心するのに越したことはありませんが、数字を額面通り信じておびえる必要もなく、あくまでそれは一つの目安だということになります。
エアロゾルに関しての注意点
エアロゾルに関しても一時話題となりました。
空気感染と同じだと表現される一般の方もおられましたね。
これに関してもモリスさんは興味深いことを話されています。
「他の呼吸器系のウイルスについて私たちが知っていることに基づくと、SARS-CoV-2が日常的な環境でエアロゾル化されるとは考えていません」
「エアロゾル化がSARS-CoV-2で発生したとしても、それは医療現場で発生する可能性が高い」
ということなのですね。
つまり、この論文の研究者が、エアロゾル化に関しては限定的な環境、特に医療現場で起こるだろうと言っているのですね。
街中で普通に咳をしたりして、それがエアロゾル化されるわけではない、ということです。
これは心配されている方にとっては朗報だと考えますね。
新型コロナウイルスと消毒
新型コロナウイルスと消毒に関しては論文化されています。
Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents
この論文によると、効果が期待しがたいものは下記です。
✕ 0.05〜0.2%塩化ベンザルコニウム
✕ 0.02%クロルヘキシジン
一方で、1分で効果を期待しうるものは下記です。
◯ 62〜71%エタノール
◯ 0.5%過酸化水素
◯ 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(★上記の論文には<一般的な濃度より濃い>0.1%の濃度が1分で効果的であると書かれています)
なお、2020年現在、消毒用のエタノールは品薄状態が続いており、無水エタノール4と精製水1の割合で作成することが一つの解決策です。
ただし、 燃料用アルコールの「メタノール」と間違えないこと、無水エタノールは引火しやすいため火の近くで作成しないこと、また乾くまで擦り込むことが大切なので手からしたたる程度までの量を使用することなどが大切です。
次亜塩素酸に関しては下記のページが参考になります。
弱酸性次亜塩素酸水 除菌モーリス スプレータイプ(400ml)
なお、よく尋ねられる次亜塩素酸水の噴霧による新型コロナの消毒効果に関しては、探したのですが論文を見つけることができませんでした。
ただSARSの時の知見として、「消毒剤を噴霧することにより、ウイルス等が空気中に舞い上がる可能性が否定できないため、消毒にあたっては可能な限り清拭することが望ましい」とされていることも念頭に置くことが大切でしょう。
また情報が出てくるとは思いますが、確定的なことは言えないところです。
まとめ
最終的には手を介して感染することが多いので、やはり手洗いは重要です。
【手洗いの内容と残存ウイルス数】
◎手洗いなし・・・約1,000,000個
◎流水で15秒手洗い・・・約10,000個(約1%)
◎ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ・・・数百個(約0.01%)
◎ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ・・・数十個(約0.001%)
◎ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎを2回繰り返す・・・約数個(約0.0001%)<※ただしデータはネコカリシウイルスを用いたもの>
【いつ手を洗うのか】
• 帰宅後
• 公衆トイレ使用後
• 用便後
• 嘔吐物を処理したり接触した後
なお、石けんなどによる手洗いとアルコール手指消毒は一緒に行わないで良いので、いずれかを行うので問題ありません。
3/29現在、一通りネットショップをチェックしましたが、ハンドジェルなどは軒並み売り切れで、配送にも時間がかかるようですね。
文中で説明したような無水エタノールを使うのが妥当でしょうね。下記リンク先にも複数出てくるので、一つが売り切れでも他が販売されていることもあり、チェックしてみると良いと思います。
【追記】なお、新型コロナでのデータではありませんが、ウイルスの中でも新型コロナに近いSARSに関して、食器洗いに使う市販の中性洗剤も消毒作用があることが確認されています。
0.5%の濃度で「100万個」のSARSウイルスを倒すことができ、中性洗剤には薄めても十分に消毒効果があることがわかったとのことです。界面活性剤が同ウイルスに対して有効とのことです。
こちらも選択肢に挙がることでしょう。
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