【2020.5/6更新】傾向スコアを用いた新研究の結果と北里大学での治験開始を追記しました。
新型コロナウイルスとイベルメクチンについて科学的根拠に基づいてまとめます。
新型コロナウイルスとイベルメクチン
最近、新型コロナウイルス関連では何でもニュースになります。
日本語メディアはしばしば検証なしで、海外の話題をそのまま流します。
私もYouTubeで動画配信を行っていて、それらに関してよく相談されます。
イベルメクチンも論文が出たのが4月3日だったのですが、5日くらいから多数尋ねられるようになり、8日には動画化しました。
オーストラリアのモナシュ大学発の研究です。
論文のリンクは下記となります。
The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro
内容を解説します。
新型コロナウイルスとイベルメクチンの論文
論文は試験管内(in vitro)のものです。実験室で行うものですね。
「48時間でウイルスRNAを約5000倍減少」とあり、それが日本でも右から左へ紹介されました。
確かに5000倍と効くとすごそうですね。
ただどうでしょうか?
実はこの研究では、他のウイルスでこれまでイベルメクチンを使用した研究をまとめています。
まずどのようにウイルスに対してイベルメクチンが効くのか?
それは、まず細胞の中の細胞質に入ったウイルスが、細胞の核に移行するのをブロックするというメカニズムとされています。
下記のように様々なウイルスが核移行のための方法を持っているのですね。
【Viral Subversion of the Nuclear Pore Complexから引用】
例えばRNAウイルスのインフルエンザの場合も、ウイルス由来のRNAポリメラーゼ複合体がvRNP複合体とよばれる非常に大きな複合体を形成します。
感染後、細胞質へ放出された各vRNP複合体は細胞核内へと移行し、転写およびゲノム複製を行うとされるのです【筑波大学HPより】。
これまでイベルメクチンに関して研究されたウイルスには次のようなものがあります。
【これまでイベルメクチンに関して研究されたウイルス】
HIV、デング熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、インフルエンザ、仮性狂犬病ウイルス、ジカウイルス
ただし、ほとんどがin vitroであって、生体での研究(in vivo)は少数です。
生体内で研究されているウイルスは限られます。
【これまでイベルメクチンに関して動物で研究されたウイルス】
仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ジカウイルス<いずれもマウス>
PRVでは感染マウスの生存が増加しましたが、ジカウイルスでは結果を残せていません。
そしてさらに、ウイルスに対してヒトで研究した数少ないものがあります。
【これまでイベルメクチンに関してヒトで研究されたウイルス】
デング熱
タイでの研究が一つありました。しかし残念ながら顕著な臨床的効果は認められていません。
…と見てくると、実はそれほど顕著な成績を上げてきたわけではないのですね。
そして今回、この研究を行った研究者のインタビューを見つけました。
それが次のものです。
研究者インタビューでは何が話されたか
Warning issued as researchers reveal another potential treatment for coronavirus
研究を行ったカイリー・ワグスタッフさんは「慎重に楽観的です」と述べています。
一方で「私たちが今理解する必要があるのは、ヒトでの安全量がウイルスにも有効かどうか」と話しており、要するに研究は端緒であるということです。
また同記事に別のオーストラリアの専門家であるビクトリア州副保健局長のアナリーゼ・ヴァン・ディーマン博士(医師)に話を聞いていますが、「研究の初期の結果は素晴らしい」しかし「実験は試験管内で行われ、ヒトでは行われていない」ことを強調し、研究は進むのに長い時間がかかることを指摘しています。
このように、まだ動物実験にも至っておらず、試験管内での実験がここまで話題になっているのです。
試験管内で有望であっても動物実験で失敗する場合もあります。
動物実験で成功しても、ヒトだと失敗することもあります。
前の前の段階であるということは言えそうです。
それがここまで話題になるのですから、今それだけ多くの方が新型コロナの治療を求めているということの証左ではありますね。
イベルメクチンに新展開が
ところが、実は世界ではすでに実験的にイベルメクチンが投与されているようなのですね。
プレプリント(論文下書き)なのですが、4/19に公表されたもので、3大陸の169病院のデータを傾向スコアという手法を用いて分析した研究で、人工呼吸器装着を装着している患者だと、イベルメクチン群で死亡した患者が少なく(7.3% vs 21.3%)、イベルメクチンの方が総死亡率は低かった(1.4% vs 8.5%、ハザード比 0.20、95%信頼区間 0.11-0.37、p <0.0001)と結果が出ています。
Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness
これだけでは何とも言えませんが、論文の結論に書いてあるようにランダム化比較試験が検討はされる内容ではあったと言えると考えます。
これらの流れを受け、5/6イベルメクチン開発者の大村智さんが特別栄誉教授を務める北里大学でもイベルメクチンの治験が開始になると報じられています。
新型コロナとイベルメクチンのまとめ
ファビピラビルやレムデシビル、シクレソニドやナファモスタットなどのほうが先行していましたが、イベルメクチンも治験になるとは一気に巻き返していますね。効いてくれればそれに越したことはありませんが、研究結果に委ねられるでしょう。
まだまだ有効性をはっきりと示している薬剤が乏しい中、重要なのは手洗いや消毒などの予防策を継続してゆくことでしょうね。
コロナウイルスは接触感染が多く手洗いや手指消毒の他、消毒が重要です(★有効な消毒液をまとめました)
論文によると1分で効果を期待しうるものは下記です。
◯ 62〜71%エタノール
◯ 0.5%過酸化水素
◯ 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(★上記の論文には<一般的な濃度より濃い>0.1%の濃度が1分で効果的であると書かれています)
なお、2020年現在、消毒用のエタノールは品薄状態が続いており、無水エタノール4と精製水1の割合で作成することが一つの解決策です。
posted with カエレバただし、 燃料用アルコールの「メタノール」と間違えないこと、無水エタノールは引火しやすいため火の近くで作成しないこと、また乾くまで擦り込むことが大切なので手からしたたる程度までの量を使用することなどが大切です。
次亜塩素酸に関しては下記のページが参考になります。
弱酸性次亜塩素酸水 除菌モーリス スプレータイプ(400ml)
posted with カエレバまた、新型コロナでのデータではありませんが、ウイルスの中でも新型コロナに近いSARSに関して、食器洗いに使う市販の中性洗剤も消毒作用があることが確認されています。
0.5%の濃度で「100万個」のSARSウイルスを倒すことができ、中性洗剤には薄めても十分に消毒効果があることがわかったとのことです。界面活性剤が同ウイルスに対して有効とのことです。
こちらも選択肢に挙がることでしょう。
花王プロフェッショナル ファミリーフレッシュ 業務用(4.5L)
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