感染症発症予防のために
2020年初頭の新型コロナウイルスによるCOVID-19を、どう予防したら良いのか、しばしば尋ねられます。
特にがんの患者さんからもよく質問されますね。
手洗いなどの予防はしっかりやっている、他にできることはないか。
あるいは衛生の点を気にしすぎて疲れてしまった、というご意見もありましたね。
たしかに、どういう生活を送ることが、可能な限り感染を遠ざけることができるのか、というのは皆さんにとって気になるトピックでしょう。
ただし、これには限界があって、100%感染を遠ざける方法はないし、また、医学の世界ではしっかりとした論文というのが非常に大切なので、必ずしも根拠がある方法ばかりではないのですよね。
実際、効果がしっかり検証されていない方法が効くと宣伝されていることは少なくありません。
さっそく◯◯が効くなどという情報も流れているようです。
ただ情報があふれていますから、どれが正しいのか皆さんもわかりづらいと思います。
そのような中で、医師の目で見て、しっかり論文などの背景も書かれていて、信頼できると感じた英文サイトがあったので紹介します。
Healthlineというサイトで、記事はこちらです→The Secrets to Never Getting Sick
私も健康の本は書いているので基礎知識があるので、それに照らし合わせて、比較的まともな内容と捉えられます。
元々は風邪やインフルエンザの予防という目的の記事ですね。新型コロナに特化はしていませんが、幅広く応用できるものと考えられます。
12項目あるのですが、バランスが良いです。ただそのうちひとつはインフルエンザワクチンのことなので、新型コロナとは直接関係がないために省きました。そのため11項目になります。
食事・運動・睡眠・メンタル・衛生が網羅されています。
今はちょうど衛生にフォーカスされているので、それが極めて重要なことは変わりませんが、バランス良い対策が必要です。
また何か1つの食材やサプリを摂取したから良いというものではないことは知っておかれると良いでしょう。
それでは紹介していきましょう。
1.緑の野菜を食べる
マウスの研究によると、アブラナ科の野菜を食べると、化学シグナルが体に送られ、効率的な免疫システム機能に必要な特定の細胞表面タンパク質が増加するとのことです。
野菜はいろいろな意味で良いので、積極的に摂取するのが望ましいでしょうね。
なお、アブラナ科の野菜は下記のようになります。
ルッコラ
チンゲン菜
ブロッコリ
芽キャベツ
キャベツ
カリフラワー
ケール
だいこん
カブ
2.ビタミンDを摂取する
ビタミンDには風邪予防の研究もあります。ただし小児が中心の研究であったりして、確定的には言い難い点もあります。
ただ風邪予防に限らず、ビタミンDの摂取は有益だと考えられるため、食材を中心に必要量を摂るように心がけるのは良いと考えます。
ビタミンDが含まれる食材は例えば次のようになります。
卵黄
マッシュルーム
サーモン
マグロ
牛レバー
3.運動
運動も風邪予防に限らず重要ですね。
下記のような効果も期待できるとのこと。
・炎症と慢性疾患を寄せ付けない
・ストレスとストレス関連ホルモンの放出を減らす
・病気と戦う白血球の循環を強め、風邪と戦う身体を助ける
運動は身体の点ばかりではなく、不安などの軽減につながることも知られています。
また最近は、がんを患っていたり、抗がん剤治療中でも積極的な運動療法(栄養療法をしっかり併用した上で)が大切と指摘されています。
筋肉量を減らさないことが重要だと言われており、そのためには有酸素運動だけではなく、筋力トレーニングなども重要です。
ウイルスと闘う力を培うためにも、しっかりとした運動は大切でしょう。
4.睡眠
2週間間にわたって毎晩最低8時間眠った健康な成人は、ウイルスに対するより大きな抵抗力を示したとのことです【Sleep Habits and Susceptibility to the Common Cold. Sheldon Cohen, Arch Intern Med. 2009;169(1):62-67】。毎晩7時間以下の睡眠だと、ウイルス感染症を発症する可能性が約3%高くなるとのこと。
その原因と考えられるのは、長時間の睡眠中に体がサイトカインを放出すること。
サイトカインはタンパク質で、免疫系を調節し体が感染と戦うのを助けますが、非常に過剰な場合だとサイトカインストームを起こして体に様々な傷害を起こします。
しかしそれを適切に調節するとのことで、睡眠はやはり大切ですね。
5.アルコールの飲み過ぎを控える
人での知見ではありませんが、マウスでの実験だとアルコールの過剰摂取は免疫を担う細胞の一つである樹状細胞の機能を低下させる可能性があるとのことです【Ethanol Inhibits Antigen Presentation by Dendritic Cells Clin Vaccine Immunol. 2011 Jul; 18(7): 1157–1166.】。
アルコール依存症において細菌やウイルス感染に対する脆弱性が指摘されていますが、このような過剰摂取による免疫系の抑制作用が関係している可能性があります【Impact of Alcohol Abuse on the Adaptive Immune System. Alcohol Res. 2015; 37(2): 185–197. 】。
6.落ち着く
新型コロナウイルスの感染者の増加に伴い、デマが流れたり、不安が高まっていることを感じます。
慢性的な心理的ストレスは、うつ病、心血管疾患、糖尿病、自己免疫疾患、上気道感染症、および創傷治癒不良のリスクが高くなるとされています。
それぞれが自分に合ったリラックス方法を見つける必要があります。
ヨガや瞑想に取り組むという方法はあるでしょう。
あるいは書くことが得意な方は、自分の思いを書いてみると、心理的な症状の緩和に役立ちます。
体内で合成されるステロイドホルモンであるコルチゾールは、体が炎症や病気と戦うのを助けます。
しかし、慢性的にストレスを自覚している人において、同ホルモンの間断ない放出が有効性を低下させると指摘されています。
そうすることによって炎症等が増え、免疫系の力が低下する可能性についても示唆されています。
7.緑茶
緑茶には抗ウイルス活性があるとのことです【Beneficial effects of green tea: A literature review. Chin Med. 2010; 5: 13.】
人相手の臨床研究ではないので、参考までに、という水準ではありますが、ジュースや清涼飲料水よりは検討しても良さそうです。
8.果物や野菜を取る
ビタミンCに関してもいろいろな意見があります。
無作為化された日本における5年間の対照試験では、ビタミンCの補給により風邪の頻度は大幅に減少するものの、風邪の持続期間や重症度には明らかな影響がなかったことが示されています。
様々な見解がありますが、普段からの食物からの摂取が好適なようです。
9.社会的であること
人での研究ではありませんが、メスと違ってオスのラットは孤独のリスクがあるようです。
孤独によるストレスの影響を受けやすいようなのですね。
新型コロナウイルスにおいては高齢男性であることが重症化等のリスクであることが知られています。
日本においても、高齢の男性は一般に、社会的なつながりが決して強固ではないことも少なくないでしょう。
新型コロナウイルスにおいては、時間が経過した後の重症化が知られています。
そのような際に、社会的な支援体制が脆弱だと、確かにその点でもリスクが存在すると考えられ、注意が必要です。
10.良好な衛生状態を実践する
下記が推奨されます。
・毎日シャワー
・食事や食事の準備をする前の手洗い励行
・コンタクトレンズを挿入したり、目や口に触れるような他の活動を行う前に手を洗う
・手洗いは石けん10秒もみ洗い、流水で15秒すすぐ
・咳やくしゃみをするときは、口と鼻をティッシュあるいは袖で覆う
・アルコール系ハンドクリーナーを持ち歩く
・キーボード、電話、ドアノブ、リモコンなどの共用物の表面を消毒
次亜塩素酸水による消毒も有効です。
11.道具は共有しない
下記のものは共有しないことが推奨されます。
・歯ブラシ
・タオル
・道具
・コップ
使い捨てのものも考えてみることが推奨されています。
まとめ
運動、食事、睡眠、衛生を保つことの他に心理面の留意点もあることが重要ですね。
気をつけることは大事ですが、極端にナーバスになってもストレスになります。
生活を整えることが大切で、特に運動は心理的にも重要でしょう。新型コロナウイルスは空気感染ではないので、人が少ない時間に運動をするということは有効と考えられます。
サプリと言うより食事の総合力が大切です。バランス良く食べることです。
睡眠の推奨は8時間と長いことを忘れないで頂くのが良いでしょう。最新情報も気になると思いますが、寝る前に強い光を浴びると眠れなくなるので注意が必要です。
新型コロナウイルスによる新型肺炎では基本的に65歳以上の方、とりわけ高齢男性が気をつけるということは変わりありません(もちろん高齢の女性も)。
一方で、大流行となると、中国のように若年の医師が犠牲になったりもあるように、衛生状態の悪化や過労は、被害を広げる可能性があります。医療機関の疲弊も問題となります。
そのため述べてきたように、一人一人がしっかり全人的な対策を行うことが様々な点で重要と言えるでしょう。
【お役立ち情報】コロナウイルスと消毒(よく尋ねられる有効な消毒液をまとめました)
◯ 62〜71%エタノール
◯ 0.5%過酸化水素
◯ 0.1%次亜塩素酸ナトリウム
なお、2020年現在、消毒用のエタノールは品薄状態が続いており、無水エタノール4と精製水1の割合で作成することが一つの解決策です。
posted with カエレバただし、 燃料用アルコールの「メタノール」と間違えないこと、無水エタノールは引火しやすいため火の近くで作成しないこと、また乾くまで擦り込むことが大切なので手からしたたる程度までの量を使用することなどが大切です。
次亜塩素酸に関しては下記のページが参考になります。
弱酸性次亜塩素酸水 除菌モーリス スプレータイプ(400ml)
posted with カエレバまた、新型コロナでのデータではありませんが、ウイルスの中でも新型コロナに近いSARSに関して、食器洗いに使う市販の中性洗剤も消毒作用があることが確認されています。
0.5%の濃度で「100万個」のSARSウイルスを倒すことができ、中性洗剤には薄めても十分に消毒効果があることがわかったとのことです。界面活性剤が同ウイルスに対して有効とのことです。
こちらも選択肢に挙がることでしょう。
花王プロフェッショナル ファミリーフレッシュ 業務用(4.5L)
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