🌟 【早期からの緩和ケア】症状がないのでまだ必要ありませんよね?――答えは「いいえ」です。
がんや慢性疾患の方からよく届くご質問があります。
「症状がないので、まだ緩和ケアはいりませんよね?」
この問いはとても自然です。
多くの方が「緩和ケア=症状をやわらげる最終段階の医療」と考えておられるからです。
しかし現在の国際的な医療では、
“症状が出てから”ではなく、“症状が出る前”から緩和ケアを受けるほうが良い
ということが、複数の研究で明確に示されています。
これこそが 「早期からの緩和ケア(Early Palliative Care)」 の考え方です。
■ 1|「症状がない=緩和ケアはまだ早い」という誤解
緩和ケアは、苦痛を和らげる治療だけではなく、
心の負担の軽減
副作用のマネジメント
生活の質(QOL)の維持・向上
医療の意思決定サポート
家族支援
先々の見通しを一緒に考える支援
といった、総合的な“伴走医療”です。
そのため、
症状がなくても始めるほうが、むしろメリットが大きい のです。
■ 2|海外で明らかになった「早期緩和ケア」の効果
世界では、早期緩和ケアの研究が数多く行われています。
代表的なのは非小細胞肺がんでの臨床研究です。
【結果】
早期から緩和ケアを定期受診した患者さんは、
生活の質(QOL)が高い
抑うつが少ない
将来の医療・ケアについての意思決定が進んでいる
そして何より…
生存期間中央値が延びていた
という衝撃的なデータが示されています。
「緩和ケアが余命を延ばす可能性がある」
という概念はここから世界中に広がっていきました。
■ 3|緩和ケアの“世代”で考えるとわかりやすい
| 緩和ケアの世代 | 特徴 |
|---|---|
| 第1世代 | 最終段階のケアとしての緩和ケア |
| 第2世代 | 症状が出てから受診する緩和ケア |
| 第3世代(最新) | 症状がなくても定期受診する早期緩和ケア |
現在は完全に 第3世代 に移行しています。
そして第3世代の緩和ケアが目指すものは、
症状を治療する“反応型の医療”ではなく、
問題を未然に防ぐ“予防型の医療” です。
■ 4|なぜ「症状がなくても緩和ケア」が必要なのか?
その本質は、
●症状が出てから対処するのでは遅い
●問題が起きる前から「準備」することが最も重要
という予防医療の考え方と一致します。
早期緩和ケアでは、
副作用の出やすいポイントを事前に把握し備える
日常生活の整え方を提案する
不安や疑問を初期からケアする
治療中の“見えない負担”を早めに軽減する
いざという時に慌てないよう意思決定を準備する
こうした支援ができます。
特にがんのように 身体・心・生活・家族・治療方針 が複雑にからむ病気では、
早い段階から専門家が入り、
患者さん自身の“本来持っている力”を引き出す ことが非常に重要です。
■ 5|早期緩和ケアは「人生の質を守る医療」
症状が出てから受診する緩和ケアはもちろん大切ですが、
それではサポートが後追いになってしまいます。
早期から緩和ケアを行うことで、
つらさの予防
心の負担の軽減
治療の継続性が高まる
急なトラブル時の備えができる
家族の支援も早い段階で開始できる
といった “患者さんの人生の質を守るための支援” が可能になります。
■ 6|まとめ ―「症状がない=まだ早い」はもう古い
医療は「問題が起きてから対処する」時代から、
「問題が起きないように準備する」時代へと進化しました。
緩和ケアも同じです。
症状が出てから緩和ケア → 第2世代
症状がなくても受ける早期緩和ケア → 第3世代(最新)
早期緩和ケアをクリニック名に冠して活動しているのは、
この新しい価値を届けたいという思いからです。
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