カロナールとロキソニンで、痛みに早く効き副作用が少ないのはどちらかを解説します。
私は緩和ケア医という痛みなどの症状の専門医で、痛み止めに精通しています。
これまで多くの方にカロナール(アセトアミノフェン)やロキソニンを処方してきました。
本稿ではカロナールやロキソニンがどこに作用するのか? 効くスピードは? 持続時間は? どちらを最初に選んだら良いのかを専門家として解説します。
最初に確認「効かない」のではなく「足りない」
まずとても大切なことからお伝えします。
「この痛み止めが効きません」
そうおっしゃる患者さんがいます。
がんで痛い場合、それは量が足りていない、あるいは複数の薬剤を組み合わせていないので一つの薬剤だけで力不足となっていることが少なくありません。
下記も併せてご覧ください。
商品名カロナール(アセトアミノフェン)や商品名ロキソニン(ロキソプロフェン)は、そもそも基本的な薬剤で、がんの中等度以上の痛みにこれらの薬剤だけで緩和するのは一般に困難です。
「カロナールが効きません」あるいは「ロキソニンが効きません」
というのは全く珍しいことではなく、そして悲観するべきことでもないのは強調しておきます。
カロナールとは?
カロナールは、中枢性に(脳に)作用する痛み止めです。
薬剤の名前はアセトアミノフェンです。
安全性が高く、小児でも用いられます。
よくロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs;エヌセイズと読みます)と並べて解説されることが多いので、一般の方や医療者でも間違って認識されている方もいますが、ロキソニン等の非ステロイド性抗炎症薬とは作用する場所も異なり、全く違った薬剤となります。
また解熱・鎮痛効果がありますが、抗炎症効果はありません。
ロキソニンとは?
ロキソニンは、末梢性に(脳や中枢神経系以外に)作用する痛み止めです。
薬剤の名前はロキソプロフェンです。
切れ味が良いので、頭痛などで使用経験がある方も多くいるでしょう。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の代表的な薬剤で、腎機能障害があると使用し難いですし、連用すると胃粘膜障害のリスクもあります。
解熱・鎮痛効果と抗炎症効果があります。
効くスピードは?
ロキソニンのほうが早いイメージがあります。
ただ最高血中濃度到達時間は、
カロナール 0.46±0.19(時間)
ロキソニン 0.45±0.03(時間)
でほとんど遜色ありません。
カロナールも効きが早いです。
持続時間は?
血中濃度が半分になる時間は次の通りです。
カロナール 2.36±0.28(時間)
ロキソニン 1.22±0.07(時間)
ロキソニンは効果が失われるのも早めですね。
ただ効果消失時間≠上記の半減期なのでご注意ください。
一般的にはどちらも数時間効果は持続します。
カロナールとロキソニン、最初はどっち?
ロキソニンは切れ味が鋭く、体感できる緩和効果が強いのですが、いかんせんNSAIDs共通の副作用として胃粘膜障害や腎機能障害の懸念があります。
それなので安全性で勝るカロナールで開始するほうが無難は無難です。
けれども骨転移痛のように、明らかに炎症が強い痛みでは、NSAIDsではないと緩和効果がはかばかしくないこともあります(そして医療用麻薬も必要不可欠です)。
実は、作用して効果を発揮する場所が違うため、カロナールで開始して効果不十分な時はロキソニンを重ねるという手段があります。
いずれにせよ基本的な鎮痛法の素養は多くの臨床医が身につけているものの、症状緩和には知識と経験が必要であり、緩和ケアの専門家に早めに相談するのが良いでしょう。