がんの痛みの専門家が、がんを患っており痛みがある場合にどうしたら良いかを解説します。
結論から言えば、大切なのは「アセスメント」と「治療」で、その正確さを高めるのが皆さんからの情報です。
詳しく説明します。
まずは原因を突き止める
がんを患っており、痛みがある場合は、まずはその原因を突き止めることが大切です。
その時に大切なのは、痛みの自覚症状の申告です。
なぜならば、痛みは主観的なものであり、客観的な手法では完全にそのつらさを把握できないためです。
一方で、痛みの情報は、次に述べる「アセスメント」や「治療」と関係してきますから、極めて重要です。
痛みに関して重要な情報は次のようになります。
● 痛みの場所
● 痛みの程度(これまでで一番痛かった痛みを10、痛みがなければ0ならば、どれくらいかで表現できます)
● 痛みの性状(鈍痛か、鋭い痛みか。異常な感覚を伴う痛みかなどの、痛みの様相)
● 持続時間・パターン(ずっと痛いのか、時折急に痛くなるが普段痛みがないのか、など)
● 状況と疼痛(動いた後に必ず痛くなる、食後に痛いなど)
● 夜間の状態(夜痛みで眠れないなどはあるか?)
● 生活への影響(どれくらい生活が障害されているか)
【すでに痛み止めを飲んでいる場合】
● 鎮痛薬の効果
● 鎮痛薬の副作用
上のようになります。
項目が多くて大変だと思いますが、いずれも大切な情報です。
お勧めされるのは、このページを見て、紙などに記しておくことです。
そしてそれを診察時に持ってゆくことです。
できればコピーしておいて、医師に渡し、ご自分も手元を見ながらお話できると良いでしょう。
これらの情報は、医師にはかなり役立ちます。
がん患者の痛みのアセスメント
アセスメントとは、医療領域では、医学的な判断・評価の意味で用いられています。
実は、痛みのアセスメントはかなり重要です。
というのは、アセスメントによって、治療も決まってくるからです。
アセスメントが間違っていると、正しい治療にたどり着きません。
つまり
正しい痛みの申告→正しいアセスメント→正しい治療
という痛み治療の法則が成り立っています。
ここで重要なことを一つお話ししておきます。
がんの患者さんの痛みは、がんが原因とは限りません。
例えば、変形性腰椎症や変形性関節症、術後の遷延性疼痛、意識がそこに集中して感じやすくなっている場合さえあり、必ずしもがんが原因とは言えないのです。
しかし、がんの患者さんは、多くの場合、新しい痛みが出ると、「再発」や「新しい転移」が頭をかすめます。
そして、痛みを感じている時間が長いと、次第に意識がそこに集中し、実際にはがんの病巣がなくても痛みを感じることがあるのです。
最終的には画像の検査など(例えばCT等)を行って診断を付けますが、この際に正確な申告が、適切な検査の実施に影響します。
ほとんどの場合、がんが原因の痛みであれば、痛いところにがんの病巣があるので診断は容易です。
病巣がない場合は、がんからの痛みを否定することができます。
緩和ケア科ではない医師も、最近は痛みのアセスメントに手慣れては来ていますが、やはり医師による差はあります。
痛みが続くようならば、がんの痛みの場合は専門家である緩和ケア科にかかることをお勧めします。
アセスメントが間違っていると、治療も不首尾に終わる可能性があり、専門家のアセスメントを受ける価値はそこにあるでしょう。
がん患者の痛みの治療
がんの患者さんの痛みには様々な薬剤を用います。
◎NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬。ロキソニンなど)
これらの薬剤を、まずは単剤(一つの薬)で、効果が乏しければ薬剤を変えたり、効果不十分ならば併用して使うこともあります。
また薬での効果が不十分な時は
●放射線治療
●神経ブロック(麻酔科で局所麻酔で行う)
を検討します。
薬の副作用もできるだけ小さくなるように専門家は配慮して処方しますので、やはり不安や疑問は医師によく尋ねることです。
治療がうまくいくと、痛みは大きく和らげることができます。
過少申告しないで、正確に伝えることが、適切な治療に結びつきます。
そのため、やはり先ほど述べたように、痛みの状態を記載して医師に見せると良いと考えます。
病院では痛みに関して記載する小冊子を無料でもらえますので、医師や看護師に尋ねてみると良いでしょう。
まとめ
痛みを伝え方に留意しながらしっかりと伝えること。
そのために記載した紙や小冊子などを利用すること。
必要ならば専門家のアセスメントや治療を受けること。
これらががんで痛みが出た場合の3つのポイントです。
動画でも解説しています。他の方にお伝えするのにも使えると思います。