痛みに対して使用される薬剤がモルヒネなどの医療用麻薬です。
医療用麻薬は大変誤解が多い薬剤です。
まず大切なこととして、医療用麻薬は、意識を落として痛みを和らげる薬剤ではありません。
意識はそのままに、痛みを伝達する神経に作用することで痛みを軽減します。
なお、医療用麻薬を使用しながら、仕事をすることも当然可能です。
判断力等に影響を及ぼしたりはしません(ただし開始時あるいは増量後1週間程度は、眠気などに注意を払う必要がありますが、次第に慣れます)。
また、これも一般のイメージと異なり、医療用麻薬は最終末期の症状緩和にはあまり向いていません。それよりも状態が良い患者さんに向いています。
昔はぎりぎりになって医療用麻薬治療が行われていたので、様々な誤解を生んでしまいました。
余命が非常に短い場合の苦痛は、鎮静薬(※モルヒネは鎮静薬ではなく鎮痛薬です)などの他の薬剤を使わなければ緩和できないことも多く、医療用麻薬の効果はしばしば十分ではありません。
このように医療用麻薬は使うタイミング、というものがあります。
副作用もいくつか注意すべきものがあります。
例えば便秘は程度差こそあれ必発なので、対処が必要となります。
吐き気は、知られている症状ですが、実は対策等行うことによって非常に少なくすることができます。
むしろ、がんの患者さんは多様な原因によって吐き気が生じるため、本当は医療用麻薬が原因ではない吐き気まで、医療用麻薬が原因と判断・説明されてしまって、増量できなくなっているケースも相当に多く経験されます。
いずれにせよ、他の薬剤と同様に利点や副作用がありますので、細やかな配慮と適切な調節が非常に重要になります。
また眠気や吐き気などは、次第に身体が慣れて軽くなる・消えるか、対策をすれば出にくい、というものであり、それらを抑えつつ、いかに適正な量まで増やせるか、というところがとても重要になります。
使い過ぎはいけませんが、使わな過ぎても、「医療用麻薬は副作用ばかりで効かない」という印象を抱きがちで、本当の効果を実感することが難しくなってしまいます。
大切な点として、そのような性質があるため、特に投与初期は量不足から「効かない」と感じることがしばしばある、ということです。そのため何度か継続的に診療にお越し頂いて、量を調節することで、緩和に至るということが通常です。一回で諦めないで受診して頂ければと存じます。
院長は医療用麻薬処方の専門家です。
ぜひ痛みのある方は相談して頂ければと存じます。