癌で痛み止めが効かない・・・のは良くあること 悲観しないで
癌で痛み止めが効かない・・・と聞くと、何やら怖いことのように思う方もいらっしゃるかもしれません。
けれども、痛み止めは量と痛みの程度や性質が合っていなければ効かないものです。
それなので、癌で痛み止めが効かない・・・というのは割と良くあることなので、それで「もうだめだ」と悲観する必要はありません。
重要な情報として、まさしくこの状態は「緩和ケア医(緩和医療医)」が専門家である、ということです。
全国に2019年3月現在で緩和ケア(正確には緩和医療)の専門医資格を持っているのは200余名であり、その一人である私が解説します。
なぜがんで痛み止めが効かないのか
先ほども述べましたが、量が足りなければどんな痛み止めも効きません。
それが第一に重要です。
薬嫌いの方もいらっしゃいます。
効果が出る前にさっさと止めてしまって良い効果を得られていないケースもあります。
次に必要なのは、痛みの原因とそれに合った痛み止めを選択することです。
世間一般の認識と裏腹に、がんの患者さんに医療用麻薬を使うのは、安全で良い方法です。
くせにもなりませんし、実際よく効きます。
一方で便秘や初期の眠気や吐き気など、注意すべき副作用もありますので、熟達した医療者から十分説明を受けることが大切になります。
がんの痛みで、アセトアミノフェン(商品名カロナール)や非ステロイド性抗炎症薬(商品名ロキソニンなど)でも痛みの緩和が不十分な際は、躊躇なく医療用麻薬を使用するべきです。
医療用麻薬を恐れていてはいつまでも症状緩和が進まず、苦痛に満ちた生活となる可能性があります。
使用すべき薬剤を使用しなければ、痛みはなかなか取れません。
骨や神経の痛みは要注意
そのような良い薬剤である医療用麻薬をもってしても容易ではないのが骨への転移の痛みや、神経に腫瘍が浸潤あるいは影響しての痛みです。
それらのケースでは、いたずらに医療用麻薬を増量だけしても、痛みがなかなか取れずに眠気ばかり増えるということは割とよくあります。
痛み止めは、医療用麻薬とは異なった部位に作用することで、別のメカニズムで痛みを緩和する薬剤があります。
例えば、プレガバリン(商品名リリカ)やデュロキセチン(商品名サインバルタ)などが代表的で、鎮痛補助薬と呼ばれます。
たまに一般の方で、これらの薬剤を医療用麻薬より優先させることを希望される方もいらっしゃいますが、がんの痛みに関しては基本的に医療用麻薬のほうが効果と副作用のバランスが良いです。
その方に合った痛み止めを、時には組み合わせることで、効果を得られるケースもあります。
試行錯誤が重要です。
まとめ
がんで痛み止めが効かないというのは珍しくない状況です。
だからこそ、その専門家の緩和ケア医(緩和医療医)がいるのです。
痛みは他の症状に比べて、治療・対策が豊富にあります。
病院ならばまずは担当医にしっかりと痛みがあることを訴えるべきです。
それでも症状緩和が芳しくなければ、緩和ケアチームや緩和ケア外来が相談先となるでしょう。担当医に紹介してもらうのが良いと考えます。
専門家にも差異があるので、症状が落ち着かないようならば当院の早期緩和ケア外来のような外部サービスの利用も検討するのが良いでしょう。