意外に多い訴え「痛みやつらさ、不安と向き合ってもらえない」ありがたいこと
しばしば聞く言葉として、がんでかかっている外来で「痛みやつらさと向き合ってもらえない」というものがあります。
皆さんもご存じのように、病院の外来はかなり時間が短いです。
そのため効率的に病状やつらさを伝えないと、あっという間に診察が終わってしまい、「待ち時間は長かったのに……」と不全感が残ります。
そして何より、しっかりつらい症状に対処してもらえなければ、元気が失われてしまいます。
しかしいくつかの解決策があります。
今日はその3つを紹介しようと思います。
病院の事情を知ればこちらも動きやすい
病院は薄利多売を強いられており、多くの患者さんを診療しなければいけない状況となっています。
そのため、一般的な外来での受診時間はかなり少なく、患者さんやご家族は不安が少なく良い治療を受けたいと思われた時に、ある程度の下調べは必須です。
またこのような病院固有の事情を知ることは、うまく受診することにつながります。
病院のことを知らないと、大変待って、診察はあっという間に終わり、「医師は一体何なのだ?」と思うことだってあるでしょう。
日本の医療システムがそうなっているので、多くの場合、医師個人が悪いわけではありません。
しかしそれを知らないと、まず不信感や不満足感から入ってしまって、正当な医療を迅速に受けることの妨げになる場合もあります。
相互理解が欠かせないのです。
では具体的にどうすれば良いか、説明を進めていきます。
医師に「外来で痛みや不安に真摯に向き合ってもらえない」
先日、
不安でも痛くなる がんで痛いのではないかと心配な時にするべきこと3つ
という記事を上げました。
それに、のぴりぃさんがコメントくださっています。
乳がん多発骨転移・多発肝転移ステージ4です!のぴりぃのボチボチ日記
『ブログ記事を拝見して、大津先生の仰るとおりだなぁと思う反面、相談しても取り合ってくれなかったり、「気のせいです」と答えるだけで終わりだったり、お願いしてもCTやMRI等の検査をしてくれなかったり………そんな医師が自分の担当=主治医であるために不安がさらに大きくなり痛みも改善せずにツラい想いをしている方も少なくない現実があるなぁ、と考えた私なのでした』
確かに、その通りです。
もちろん早期緩和ケアクリニックがありますので、私の外来を受診して頂ければこのような問題も解決できるようになりました。
ただその前に、なんとか自分でもやってみたい、そのような方も多くいらっしゃるでしょう。
それなので、真正面からつらさを訴えたのにうまくいかなかったという場合の次の策を考えてみましょう。
外来で痛みや不安に真摯に向き合ってもらえない場合の技3つ
重要なこととして、外来で医師は頭をフル回転させています。
話しながら、考えてもいます。
したがって、訴え方が弱ければ、まず届かないと思ってください(もちろん個人差があります)。
また世の中の症状は「様子を見ると改善する」ことも多いのです。
そのため、判断に迷えば、基本は「様子を見ましょう」となってしまいます。
どうしたら良いでしょうか? まずは……
① 症状や経過を紙に書いておいて、渡す
痛み(あるいはその他の身体の症状)があるということは、しばらくそのような状況が続いていると思います。
簡単でも良いので、その痛みの場所や程度、経過を記しておいて、
「この苦痛を緩和してほしいと思います。よろしくお願いします」と書き添えます。
一目瞭然でつらいことがわかります。
それだけ困っているということを理解してもらい、かつ経過が丸わかりですから、医師も対応に駆り立てられます。
あれもこれもと欲張って書くと(気持ちはよくわかります)、焦点がぼやけますので、対処してもらいたい症状は絞れるならば2、3個にすると良いと思います(それ以上あるならば、迷わずかかりつけ病院の緩和ケア外来にかかるべきです)。
それでもあまり親身に対応してもらえなかった、という場合は、先生は相当忙しいのだと受け止め、次の方策に参りましょう。
② 外来看護師や、外来化学療法中ならば看護師や薬剤師に伝える
医師は病院で一人で働いているわけではありません。
円滑に診療などの仕事を行うには、他の医療職との協力が必要不可欠です。
したがって、他の医療スタッフの言葉に耳を傾ける必要性を医師は自覚して仕事をしています。
また医療スタッフは医療スタッフで、医師にどう伝えたら医師が動いてくれるかを把握しています。
もちろん医療スタッフも個性や忙しさなどがありますから、どれだけ動いてくれるかは未知数です。
それなので、多くの医療者にとりあえず言ってみることが重要です。
すると医師に間違いなく問題の重要性が伝わるでしょう。
なかには手練の医療スタッフもいるので、彼女/彼からの具申だと、医師が速やかに対応してくれることもあります。
医師以外の医療スタッフを上手に活用することを考えることが重要です。
また①で経過等を紙に書いておけば、他のスタッフにそれを見せることもできます。
それでもあまり親身に対応してもらえなかった、という場合は、この病院は医師も看護師も薬剤師も相当忙しいのだと受け止め、次の方策に参りましょう。
③ 緩和ケア外来あるいは緩和ケアチームの関与を切望する
一医療者としては、①や②で対応してもらいたいと思ってしまいますが、うまくいかないこともあるでしょう。
その際は、緩和ケア外来あるいは緩和ケアチームの関与を「切望する」ということです。
なぜ切望とカッコを付けて書いてあるかというと、これも弱く主張しては「私が対応します」「紹介してもね……」等と難色を示されてしまうこともあるからです。
他の科への紹介は、事務手続きが増えますので、それを厭わないだけの何かが必要です。
「どうしても」という患者さんやご家族の切望は、その何かになりえます。
実際、私の外来にも少数ながら「どうしてもと患者さんが仰るので」と紹介状に記載されて紹介されてきたケースがありました。
大病院に勤務していた時も、「ようやく先生の外来にたどり着きました」と早期から私の外来にやって来られた患者さんもいらっしゃいました。
あらゆる反対をはねのけての(そんなこともあるのです!)、受診でした。
一念は通じます。
それでもあまり親身に対応してもらえなかった、という場合は、その病院の緩和ケアにはもうちょっと頑張ってもらいたいと思わざるを得ませんが、またこれまではその後の対処が難しかったのですが、今は私が対応できますので、お声がけください。
なお医療職の方で、担当している患者さんがどうしても症状緩和してもらえずに忸怩たる思いを抱えておられるような場合も、クリニックをご紹介頂ければと存じます。
私は病院勤務も長かったので、医師との協働は非常に多く、安心して併診できると存じます。
まとめ
外来で痛みや不安に真摯に向き合ってもらえる場合も多いです。
一方で難しいケースもまたあるのが現実です。
そのような際は
① 症状や経過を紙に書いておいて、渡す
② 外来看護師や、外来化学療法中ならば看護師や薬剤師に伝える
③ 緩和ケア外来あるいは緩和ケアチームの関与を切望する
の順で対応してみると良いでしょう。
多くの方が、「早期からの」緩和ケアをしっかり受けられることを願います。