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新情報

アナモレリン(エドルミズ)がん悪液質と食欲不振・体重減少の薬

早期緩和ケアクリニック外来の緩和医療専門医(緩和ケア医)大津秀一が解説する悪液質治療薬アナモレリンはがん悪液質の患者の救世主となるか

【2021年1月28日更新】がん悪液質に対しての初の適応症薬として期待されているエドルミズ(アナモレリン)。とうとう2021年1月22日に承認になりました。

・非小細胞肺癌におけるがん悪液質患者を対象にプラセボを対照とした多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第Ⅱ相臨床試験(ONO-7643-04)

・胃癌、膵癌および大腸癌におけるがん悪液質患者を対象にした多施設共同非盲検非対照第Ⅲ相臨床試験(ONO-7643-05)

の結果を受けてとのことで、いよいよ臨床の現場で使えるようになりましたね。

 

アナモレリン(エドルミズ)の基本情報

アナモレリンはこれまで類例がなかった悪液質の治療薬で期待されています。

がんの患者さんが非常に痩せることは皆さんもご存じだと思います。

そしてがんで亡くなるのは、まさに衰弱から来るのですが、それをもたらしているものがこの悪液質なのです。

がんの死因となっている、とも考えられます。

そのため悪液質の治療については注目されているのです。

 

悪液質をご存知ですか?

皆さんは悪液質をご存知ですか?

あくえきしつ、と呼びます。

がんは悪液質を起こします。

がんの末期の方が痩せるのも、悪液質からです。

悪液質は複雑なメカニズムで起こり、ここを1つブロックすれば改善するというものではありません。

また、悪液質を起こすのも、進行したがんです。

したがって、がんが高度に進行すると、がん自体が悪液質のメカニズムを生み出すため、コントロール不能となってしまうのです。

悪液質は、単なる食事摂取不良ではなく、平たく言えば「栄養を利用できなくなってしまう病態」です。

しかも筋肉のもとである蛋白を分解したりする物質まで、体内で生成されているとも指摘されています。

それなので、食べても食べても、太い血管から高濃度の栄養液(高カロリー輸液)を行っても、患者さんは痩せてしまいます。

なお、この悪液質の病態は、飢餓とは異なっているため、がん患者の末期は「餓死」という表現は間違っています

餓死のようなエネルギー不足ではなく、栄養の代謝障害(利用障害等)が本質であり、実際に飢餓の場合は筋肉量が比較的保たれるにもかかわらず、先述したように悪液質は筋肉が分解されるため筋肉量の低下が著しいなど、病態や表現型が異なります。

悪液質により消耗し、感染などにも脆弱化し、全般的な衰弱も進行します。

がん患者の最期は悪液質によってもたらされる、等とも表現されるゆえんです。

逆に言えば、この悪液質を防ぐことができれば、患者さんはより長期に生存できるという可能性があるのです。

 

初の悪液質治療薬

2018年11月27日、グレリン様作用薬のアナモレリンが「がん悪液質における体重減少及び食欲不振の改善」の効能・効果で国内製造販売承認申請が行われました。

初の悪液質治療薬になります。経口薬で100mgを1日1回空腹時に内服します。

発売されたらバカ売れしそうですね。

では実力はどの程度なのでしょうか?

非小細胞肺がんの悪液質の患者の治療のためのアナモレリン(ONO-7643):日本人患者の無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験の結果

によると、12週間でのベースラインからのLBM(除脂肪体重)の変化は、アナモレリン群とプラセボ群でそれぞれ1.38±0.18および-0.17±0.17 kgでした(P <.0001)。

がん悪液質の進行消化器がん患者を対象としたアナモレリン(ONO-7643)の多施設非盲検シングルアーム試験

によると大腸がん、胃がんおよび膵臓がんの患者さんでは、治療に反応した患者の割合は63.3%(95%CI、48.3%-76.6%)で、ベースラインから12週目までのLBMの変化は、ベースラインから1.89±0.36 kgでした。

副作用は患者さんの42.9%で認められ、10.2%は治療中止に至りました。内容はγ-GTPの増加(8.2%)、糖尿病(6.1%)、高血糖(6.1%)などでした。

効き方ですが、アナモレリンはグレリン様作用薬です。

グレリンは消化管から分泌される食欲促進ホルモンで、脳の下垂体で成長ホルモンの分泌を促し、また視床下部に働いて食欲を増進させます。

それらを通して筋肉量や体重を増加させ、悪液質を改善するというのがそのメカニズムです。

悪液質のメカニズムは、グレリンだけを介しているわけではないので、時計の針を反転させるほどの効果はないかもしれませんが、これまで有効かつ長期に作用する薬剤がとにかく少ない病態だったので、どれだけ臨床的な効果を顕現するのか、使用が俟たれます。

「どのがん種まで適応になるのか」という議論もあるようであり、患者さんの視点では全腫瘍に適応されると良いでしょうね。あと薬価がどうなるかです。

悪液質は臨床家にとっても頭が痛い問題で、名前はあまり知られていませんが多くの進行がんの患者さんにも実は切実な問題です。

期待される薬効を示してくれることを願いたいですね。

 

 

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