がんゲノム医療が3分でわかります
2019年6月1日より保険適用された「がんゲノム医療」が事前知識0から3分でわかるように、一般の皆さんにがん治療医が解説します。専門機関のサイトよりグッと少なく平易に、要点を絞って解説しています。
がんは誰でもわかる言葉だと思いますが、ゲノムとは何でしょうか?
ゲノムとは、遺伝子(gene)という言葉に、全てを意味する「-ome」という言葉を加えた造語で、DNAのすべての遺伝情報のことを意味します。
すなわち、がん細胞が持っている遺伝子情報を元に行う治療のことです。
がん組織や血液からDNAを抽出、遺伝子情報を解析して、その結果を治療に活かします。
それが、がんゲノム医療です。
がんゲノム医療はどんな人が対象で、どんなメリットがあるのか?
がんゲノム医療は、名前の通り「がん」がある方、すなわちがんの患者さんが対象です。
今回医療保険適用となったのは、血液のがんではないがん(固形がん)で標準治療がないか終了になった(あるいは終了が見込まれる)患者さんとのことです(ただし日常生活に支障がないレベルの体力等が必要になります)。
それなので自費の場合を除き、標準治療がないか難しい、あるいはできなくなった患者さんです。
現在、がんの治療においては、特定の遺伝子異常があると、その遺伝子異常に合った薬剤が選択される治療が普及してきています。そのため治療に入る前に検査を行って、どんな遺伝子異常があるかどうかをチェックしてから治療に入る場合も少なくありません。
昔の抗がん剤は、とにかくがん細胞にも普通の細胞にも幅広く作用するものでした。
そのため、正常の細胞への毒性もありますし、がん細胞だけめがけて作用するものではないという特性がありました。
がん細胞の遺伝子異常を利用した治療では、そこにめがけて治療が作用するので、効果や副作用の点でメリットがあります。正常の細胞にも作用してしまいますが、よりがん細胞に特化した治療ではあると言えるのです。
保険適用されているのは、「NCCオンコパネル」と「ファウンデーションワンCDx」の2種類です。
これらの検査を受けると、がん細胞の遺伝子異常がずらずらと検出できます。
現状では、NCCオンコパネルは遺伝子114個、ファウンデーションワンCDxは324個の遺伝子を調べて、異常を検出できます。検査をすると、これらのうちから異常がある遺伝子がわかるのです。
残念なのは、一部はある遺伝子異常に対しての特効薬がわかっているのですが、多くの遺伝子異常にはまだ特効的な薬剤が見出されておらず、適合する治療薬が見つかった例は1割程度とされていることです。
ただ、原発不明がんや希少がんなどの元々治療選択肢が限られているケースでは、恩恵が大きい可能性があります。
まとめると、「個々人のがんに合った治療薬が前より見つけやすくなったこと」が保険適用されたがんゲノム医療の検査のメリットだと言えましょう。
がんゲノム医療の費用は?
がんゲノム医療はこれまで日本の保険医療における適用がなかったため、全額自費でした。
いくつもあるがんゲノム医療における検査のうち2種類が今回保険適用になりましたが、それは先述した通り「NCCオンコパネル」と「ファウンデーションワンCDx」です。
どちらも公定価格は56万円とのことです。
今後はこの値段に、自己負担の割合分を乗じた費用がかかりますが、日本は高額療養費制度があります。
高額療養費制度等の値段については下記でも説明しています。
そのため、自己負担は8万円+α程度(収入によって高低あり)で受けられるということになります。
安くはないですが、べらぼうに高いわけではありませんね。
がんゲノム医療が受けられる病院は?
ズバリ、下記のリンク先にある病院です。
リストを見て頂ければわかりますが、「がんゲノム医療中核拠点病院(以下中核拠点病院)」と「がんゲノム医療連携病院(以下連携病院)」の2種類があります。
中核拠点病院は11施設です。連携病院はいずれかの中核拠点病院と結びついていますね(リスト参照)。連携病院でも検査は受けられます。
がんゲノム医療の受け方は?
ご自分がかかっている病院が中核拠点病院や連携病院ならば、担当医やがん相談支援センターなどに尋ねることで、専門外来や所定の流れにつないでくれるでしょう。
かかりつけが中核拠点病院や連携病院ではない場合は、今の病院の担当医からいずれかの中核拠点病院や連携病院を紹介・予約してもらうという手続きとなっているケースが多いようです。
まずは先程のリスト(中核拠点病院・連携病院の一覧リスト)から最寄りの、あるいは希望する病院を見つけて、「◯◯病院(リストの中核拠点病院や連携病院の名前) がんゲノム医療」とGoogleやYahoo!等のポータルサイトで検索することで、手続きの進め方が見つかることが多いでしょう。それを確認した上で、担当医と相談すると良いでしょう。
一度流れに乗れば、あとは所定の方法で話が進んでいくはずです。
まとめ
がんゲノム医療のメリット・費用・受けられる病院を簡単に説明しました。
現時点では、がんで良い治療が見つからないあるいはなくなった際に、ふさわしい治療を8万円+αで見つけられる可能性がある検査を受けられるメリットが存在する、とまとめられそうです。
ご参考になれば幸いです。