進行膵臓がんの緩和ケア
膵臓がんは、患者さんが一番認識されているように、必ずしも容易ではない腫瘍です。
使える薬剤にも制限があり、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬はほとんど治療適応がありません。
術後化学療法はTS-1の半年が中心です。
再発・治癒切除不能時にはFOLFIRINOX【フォルフィリノックス。オキサリプラチン(L-OHP:商品名エルプラット)、イリノテカン(CPT-11:商品名カンプト等)、レボホリナート(l-LV:商品名アイソボリン他)、フルオロウラシル(5-FU:商品名同じ)】という4剤併用療法が行われます。
これら抗がん剤などのがん治療の副作用対策も必要になります。
治療選択肢のある程度の限定性や、高度進行例の厳しい経過を考えると、早期からの緩和ケアの並行がかなり重要な腫瘍です。必須に近いと考えても良いでしょう。
膵臓がんの苦痛症状
緩和ケア情報をお届けする早期緩和ケア相談所ページでも、膵臓がんの緩和ケアを紹介しています。
膵臓がんが進行すると痛みの原因になります。
医療用麻薬が疼痛の緩和に有効です。アセトアミノフェン、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などを組み合わせることもあります。
膵臓がんは進行初期は内臓痛なので、医療用麻薬がよく効きます。
しかし進行するに伴い、「だんだん効かなくなった」等と苦痛を訴えられる方がいます。
それは医療用麻薬が連用で効かなくなるわけではなく、膵臓がんは進行に伴い、腹腔神経叢浸潤(ふくくうしんけいそうしんじゅん。上腹部の神経が網の目状になっている部位へのがんの進展)から難治性の神経障害性疼痛(神経の痛み)を来しえます。
神経の痛みには内臓の痛みほど医療用麻薬がよく効かないので、痛みに神経の痛みの要素が強くなると、まるで効かなくなったように感じてしまうのです。
神経叢浸潤に伴う神経障害性疼痛には、鎮痛補助薬(痛み以外の主作用がある薬剤だが、痛みにも作用する薬剤。プレガバリン<商品名リリカ>やデュロキセチン<商品名サインバルタ>などは、神経障害性疼痛に対する適応もある)を、医療用麻薬等に追加することもあります。
また麻酔科の専門医が行う、神経ブロックを追加するのを検討する場合もあります。
このように難治性の疼痛を形成することもあるので、緩和ケアの担当者への相談も勧められます。
他、肝臓に転移したり、がん性腹膜炎を来して痛みや腹水を来してくる場合や、十二指腸狭窄から上部消化管閉塞を来たすこともあるなど、多様な病態を形成しえます。
最終末期の身の置き所のなさは鎮静で対応
末期膵臓がんになると、倦怠感やせん妄が出現・増悪します。
余命数日となると、身の置き所のない様態を示し、患者さんは苦しまれ、看ているご家族もつらいです。
このような時の緩和策が「鎮静」を受けることです。
上記の参考資料や動画もご覧ください。
命を縮めず、眠った状態に導かれることで、苦痛緩和されます。
膵臓がんの患者さんは、他の腫瘍の最終末期と同様に、身の置き所のない様態を示すことがしばしばあるため、鎮静ができる医師にかかると安心だと考えられます。
まとめ
生きるために緩和ケアを併用する流れがますます加速してきています。
参考;腫瘍学<がん治療・抗がん剤治療等>と緩和ケアの統合(早期からの緩和ケア)は世界的な課題
攻めの治療に守りの治療を追加することが、良い結果を得ることにつながります。
早期からの緩和ケアをご活用頂ければと思いますね。