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つらい症状と緩和ケア

苦痛緩和のための鎮静を知ることでつらい最期を回避

早期緩和ケアクリニック外来の緩和医療専門医(緩和ケア医)大津秀一が解説するがんの治療抵抗性の苦痛と鎮静

苦痛緩和のための鎮静、ご存知ですか?

中には全く知らないという方もいらっしゃるかもしれません。

けれどもこのサイトをご覧になっていらっしゃるような方は、比較的ご存知の方も多いかもしれませんね。

2018年の今年、鎮静のガイドラインが改訂になっています。

名前が「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き」となりました。

名称が変わり、「苦痛緩和のための鎮静」から「がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静」になっています。

「基本的な考え方の手引き」という名称も、総合的な対応や考え方を提示する手引きとしての目的を指し示しています。

本稿では、わかりやすいので旧来の苦痛緩和のための鎮静、としましたが、確かにより適切なのは「がん患者の治療抵抗性の苦痛」と限定した言葉でしょう。

苦痛があれば何でもかんでもしてしまう、と捉えられないように、「治療抵抗性である」ことが明示されているわけなのですね。

意識を保持したまま苦痛緩和する標準策がうまくいかなくなった時(これはがんの場合だとおおよそ推測余命が数日ということが多いです)、意識を低下させるように鎮静剤を用いて苦痛緩和する方法です。

意識を低下させないで苦痛が緩和できるならばそれに越したことはありませんし、医療者は基本そうしています。

しかし、それでも余命数日の場合の身の置き所のない様態の苦痛緩和は難しい場合がしばしばあります。

最近は、その中の相応数がせん妄になっていることも指摘されています。

せん妄は不良な全身状態による脳の変化です。

それもあって全身状態が不良なおおもとが改善できない終末期では、せん妄をもとに戻すことも困難です。

それなので、覚醒しているように見えても、せん妄状態であることが多いです。

かくして、意識を低下させる以外に有効な緩和策がないということもあるのです。

 

鎮静の疑問と誤解Q&A

いくつかの疑問及び誤解に答えたいと思います。

Q. 鎮静はモルヒネで行うのですよね?

そうではありません。胃カメラを眠って行う際に使う薬剤等の鎮静剤を用いて行います。

Q. 始めたらずっとそのままなのですよね?

もともと、頓用で使う方法(間欠的鎮静)でも、間断なく苦痛があることを確認して持続投与になることが多いです。全例最後まで持続投与を行うわけではありません。

中止する場合もありますが、また元の苦痛が再出現する可能性もあります。

Q.デメリットは命が縮むことですか?

命に関しては有意な影響はないという研究が出ています。

Effect of continuous deep sedation on survival in patients with advanced cancer (J-Proval): a propensity score-weighted analysis of a prospective cohort study.(日本の研究です)

ただし、基本的には推測余命が数日の際に適応となるので、鎮静を行っても行わなくても、残り時間は極めて短い状況です。

命のことよりもデメリットは、意識が低下するので、コミュニケーションが難しくなることです。

しかしそもそもせん妄等から亡くなる数日前は円滑なコミュニケーションは損なわれることが多く、たとえ鎮静を行わなくても、良好なそれが図れるとは限りません

「意識を落とすなんて……それだったら最後の言葉も交わせないじゃないですか」

と動揺されるご家族もいらっしゃいます(当然の反応だと思います)。

ただすでに耐え難い苦痛が出ており、意識も変容しており、それだからこそ鎮静が提案されるのです。

鎮静が提案されるような場合は、鎮静を行わないままにしても、意識が変容したままで、正常のコミュニケーションが不可能な場合も多いです。

欲を言えば、そうなる前に、十分必要なコミュニケーションは交わしておくのが良いです。

鎮静が検討される段階で、何とか鎮静をしないでコミュニケーションを保持したいと考えても、元々の病気からの意識変容や低下、混乱があり、実際は鎮静しなくともコミュニケーションは難しいことも多いのです。

Q. 安楽死と何が違いますか?

安楽死は、死をもたらして苦痛を感じなくさせることですが、鎮静は意識を低下させ苦痛緩和するという目的で、考え方も手段も異なります。

Q. 先生は著作で、「鎮静ができる医療者を選択すべき」と書いていたと思いますが、なぜですか?

それは、鎮静でなければ緩和できない苦痛があるからです。

鎮静ができる医療者ならば、するしないも含めて対応してくれるので良いですが、そうでない医療者、あるいは「絶対にそれをしない」と宣言している医療者だと、もし自らが終末期になって耐え難い苦痛が出ている場合に、鎮静で対応してもらえないということが想定されます。

終末期あるいは終末期に移行することが想定される時は、基本的に鎮静ができる医師に診てもらうのが良いでしょう。

Q.がん治療をしなければ鎮静など要らないと聞きましたが、それは事実ですか?

いいえ。がん治療をしない患者さんでも、終末期の苦痛は出ますので、鎮静が必要になるケースもあります。

Q.在宅だと鎮静が不要だと話している先生もいますが、事実ですか?

いいえ。在宅でも必要になるケースがあります。確かに在宅だとせん妄が病院よりも軽く、終末期の身の置き所のなさが軽いケースも散見されますが、絶対に要らないとは言えません。

Q.苦痛緩和の技術が劣っているので鎮静になりやすいというのは本当ですか?

いいえ。次の項の虎太郎先生のブログをご覧ください。

 

大切なのは数ではなく内容

在宅緩和ケア医の虎太郎先生が、鎮静について非常にまとまった記事を書かれています。

「鎮静」という手段を知って下さい

必見の内容だと思います。

また関連した内容として、下記の記事も大変よい記事です。

目的と手段を入れ替えてはいけない

 

緩和ケアの質は、手術後の生存率というような客観的な指標では図れません

なぜならば、個々人の「主観」と関連する領域だからです。

参考;緩和ケアの病院格差を国が調査予定 格差はあるでしょう

緩和ケアにおいて重要なことは、価値観や希望と提供している治療が合致することです。

例えば、「うちの施設は在宅死が100%」と在宅医療や看取りの技術の高さを主張する施設があったとしても、その施設の緩和ケアが優れているとは言えません。

なぜならば、求めていない方まで在宅死に誘導しているかもしれないからです。

少なくとも、在宅以外に亡くなりたい方も確実にいる状況において、在宅死率の高さを誇っても、それは優秀性をアピールすることにならず、むしろ特定の価値観が施設を覆っていることを示唆します。

あるいは、「うちのクリニックは鎮静率が0%」と苦痛緩和の技術が高いので鎮静率が低いのだと主張する施設があったとしても、その施設の緩和ケアが優れているとは言えません。

なぜならば、鎮静が必要な患者さんは確実にいらっしゃるからです。

それなのに100%しないということは、苦痛を過小評価している可能性や、鎮静をしないことが最善であるという価値観に捉われている可能性があります。

重要なことは、患者さんやご家族の価値観になるべく医療をフィットさせることです。

もちろん非現実的なことまで合わせる必要はありませんが、医療者主導での価値観で、数を誇るようなことがあってはならず、また「主観」が重要な緩和ケアにおいて、そのようなパーセンテージはあまり意味を持たないでしょう。

 

まとめ

多くの方の人生の最後に関係する医療処置なのにもかかわらず、鎮静に関してはあまり知られていません。

本当の緩和ケア医にかかる意味の一つは、「必要ならば鎮静をしてくれること」も無視し得ないと思います。

少なくとも医療ユーザーの経験も豊富にある自分としては、患者の立場としては、鎮静をできない・してくれない医師に最後はかかりたくないです。鎮静を適正にしてくれる医師に任せたいと思います。

医師選びに関わるくらい重要なことなのですが、知名度は低いです。

私もこのホームページで一度取り上げているので、そちらもよかったらお読みください。

がんの症状緩和の鎮静について

とにかく知名度の向上がまずは重要なので、ぜひ周囲の方で誤解されているような方がいたら、皆さんからもお伝え頂ければと思います。

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