カドサイラ
カドサイラはハーセプチンと抗がん剤の作用を併せ持つ薬剤です。
2018年12月、タキサン系抗がん剤とハーセプチンによる術前治療を受けたHER2陽性乳がんの患者さん(残存腫瘍がある場合)、術後治療として14サイクルのハーセプチンを行う群とカドサイラで行う群で比較した結果、3年内で浸潤なく経過する患者がカドサイラ群で高い【88.3% vs 77.0%, HR 0.50, 95%CI 0.39-0.64, P<0.001】と論文が出ましたね。
Trastuzumab Emtansine for Residual Invasive HER2-Positive Breast Cancer.
あくまで残存腫瘍がある場合の結果ですね。
50%の低下ということで注目されます。
ネラチニブ
ネラチニブは本稿執筆時点で日本では未承認です。
抗HER2薬ですが、HER1やHER4も不可逆的に阻害し、しかも「経口の」チロシンキナーゼ阻害薬です。
1年間の術後ハーセプチン療法後のネラチニブ1年間経口投与で、無浸潤疾患生存率<追跡期間中央値5.2年>はネラチニブ投与群で90.2%、プラセボ投与群で87.7%でした【HR 0.73, 95%CI 0.57-0.92, p = 0.008】
副作用は下痢が問題となりました。
そのネラチニブが今度は、HER2陽性進行乳癌の3次治療における、これまでのタイケルブ+ゼローダと、ネラチニブ+ゼローダを比較したNALA試験において、
無増悪生存期間が有意に改善したという結果がこれから発表されるようです。
まとめ
HER2陽性乳がんも様々な薬剤が使用可能になって来ますね。また新たな使用法が集積されています。
治療期間も長くなる傾向があるので、副作用の抑制・緩和、心身及び社会的問題の改善・解決のため、治療に理解がある緩和ケア医が主治医と並行して携わる早期からの緩和ケア定期受診もますます重要となるでしょう。