鎮痛薬・痛み止めで眠くなってしまう
鎮痛薬・痛み止めで眠くなる……という方もいらっしゃいますね。
市販薬で眠くなる場合もあれば、慢性痛などで医師から処方される薬で眠くなることもあります。
鎮痛薬と眠気について解説します。
なお、私の緩和ケア医といって、痛み止めなどの薬と症状の専門家です。
その視点から解説します。
1 市販の鎮痛薬で眠い
2 処方された鎮痛薬で眠い
にわけて説明しましょう。運転への影響や、どうしたら眠くならないのかについても解説します。
市販の痛み止めで眠い
ドラッグストアで買ってきた薬剤を飲むと眠くなる……という方がいらっしゃいますね。
実はそれには原因があります。
市販薬は、痛み止めだけが入っている単剤の薬だけではなく、いくつかの成分が含まれている合剤の薬も少なくないのですね。
市販薬を購入する場合は、薬剤師に相談する他、成分をしっかりと見るのが良いでしょう。
それで成分に「アリルイソプロピルアセチル尿素」や「ブロムワレリル尿素」という表記がないか確認してみましょう。
これらは催眠・鎮静作用がある薬剤です。
市販薬の痛み止めは、意外に痛み止め成分だけの「単剤」ではない薬があるのです。
その成分の中に、上記のアリルイソプロピルアセチル尿素やブロムワレリル尿素等が入っていると当然眠くなりますから、それらが入っていない薬が望ましいでしょう。
薬は本当に個人差が大きいため、上記の眠くなる成分が入っていてもほとんど眠くならない方もいれば、てきめんに眠くなる方もいます。
自分の体質と合った薬を選びたいですね。
なお私は仕事柄、本当に必要な時以外は混じり物の薬があまり好きではないので、イブプロフェンでも「イブ」を購入します。名前に何もついていないイブならば単剤です。
単一成分のほうが安いですしね。
医師からの処方薬で眠い
市販薬で眠い場合について説明してきました。
今度は、医師から処方された薬で眠い場合についてです。
実は痛み止めで眠くなる薬はいろいろあります。
ただいずれも、眠くして痛みを止める薬剤ではないですから、そこは誤解しないほうが良いでしょう。眠ければしっかりともう一度医師と相談することです。
① オピオイド系鎮痛剤(医療用麻薬系鎮痛薬)
がんの痛み止めとして使用されるモルヒネやオキシコドン、フェンタニルといった薬剤は、投与初期と増量時に一時的に眠くなります。
またある程度増やしていって、痛みと量が釣り合わない(量が多すぎる)とやはり眠気になります。
モルヒネ等と、作用する場所は同じなのに、薬効の違いで医療用麻薬指定ではないものもあります。
トラマドール(商品名トラマールやトラムセット)やブプレノルフィン(商品名ノルスパンテープ)です。
これらの薬剤も眠くなります。
ただ、投与初期と増量時の眠気は数日で改善してきますので、逆に処方されて1週間以上眠気が続くようならば処方医とよく相談すると良いでしょう。
なおこれらのオピオイド薬は添付文書上運転が禁止になっていますが、より細かい情報は下の本で紹介しています。
② リリカやタリージェなど
神経の痛み止めであるリリカやタリージェといった薬剤も眠気の原因になります。
運転は厳禁ですし、高齢の方は転倒も心配です。
また添付文書の初期用量は多すぎるので、眠気が強いようならば処方医と相談しましょう。
本当は少量から開始するのが望ましい薬剤で、治療に習熟している医師はよくそうしています。
腎機能障害がある方はより濃度が上がるので、注意が必要です。
③ サインバルタ
痛み止めとして用いられるサインバルタも眠気が出る薬剤です。
添付文書には傾眠24.3%とされています。それでも、サインバルタが属する抗うつ薬の中では比較的眠気は重度ではないほうですが、体質によっては強く出ます。
④ PL顆粒(風邪薬)
風邪薬として超有名なPL(ピーエル)。最近は市販薬でも購入できます。
PLは、痛み止め成分(サリチルアミド、アセトアミノフェン)が入っていますが、「プロメタジン」が入っています。プロメタジンは鼻汁等への適応があるのですが、眠気の原因になります。PLで眠くなる方は、アセトアミノフェン単剤のほうが良いかもしれませんね。PLも添付文書上で運転は禁止です。
今回は鎮痛薬の特集ですが、鎮痛薬以外にも眠くなる薬剤はいろいろとあるので、処方を受ける際は「眠気」「運転(★車を運転される方は)」についてしっかりと尋ねておくのが良いでしょう。
まとめ
鎮痛薬で眠くなる……ということについて解説してきました。
意外に多くの薬剤が、過量ではなくても眠気の原因になります。
市販薬ならば眠気の原因になる成分を除いたものを購入し、医師から処方を受ける際は眠気についてよく尋ねて相談することが大切です。
また特に運転される方は、十分医師と相談して処方してもらいましょう。