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緩和ケアの技術

冷たい湿布と温かい湿布 痛み緩和どっちが良いかと使い分け

冷たい湿布と温かい湿布のどちらが良いかについて解説

冷シップと温シップ湿布ともに侮れない

湿布は冷たい湿布である冷シップと、温かい湿布である温シップがありますね。

私の専門はがんの痛みで、がんの痛みに関しては湿布よりも内服薬が中心です。

というのは、がんや転移の痛みは内臓など筋肉等よりも深い場所の痛みであることも多く、湿布の効果を得るのは難しく、実際にそのメリットを示す研究も不足しがちです。

それなので、がんの痛みの場合は内服薬を主として治療するのですね。

一方で、頭頸部がんの患者さんをはじめ、湿布を使って「症状が改善しました」と仰る患者さんも少なくありません。

頭頸部がんでも痛みの原因は深いところに存在する場合も多いのですが、痛みの緩和としては実感されることがあるのですね。

さて、冷たい湿布と温かい湿布、どちらが良いのでしょうか?

 

冷たい湿布と温かい湿布の比較

冷湿布と温湿布を比較しましょう。

冷湿布(冷シップ)

サリチル酸メチルやメントール、ハッカ油などが成分です。

成分によっての抗炎症効果や鎮痛効果があります。

基本的には急性の炎症に用います。赤み、腫れ、痛い等の炎症がある時期に使う湿布ですね。

温湿布(温シップ)

サリチル酸メチルにカプサイシン(トウガラシエキスの主成分)や、合成トウガラシエキスなどが含まれます。

成分により、局所の血管を拡張させて、貼付部の血流が増加することによっての緩和を図ります。

慢性的な肩こりや腰痛で、患部が硬く冷たい場合、お風呂で温めると良くなる場合等に向いています。一方で、局所刺激が強めなので皮膚が弱い方は注意が必要です。

 

ぶつけたりなどして局所が炎症を持っている場合、急性の場合は冷シップ。

慢性的に痛んで、ほぐしたり加温したりすると良くなる場合は温シップですね。

さすったりなでたりして良くなる場合も温シップが向いていると言われます。

さて、肝心のどちらがより良いかについて述べましょう。

 

冷たい湿布と温かい湿布のどっちが良い?

答えは……

 

痛みがご自身にとって軽減されるほうでOKということになります。どちらでも良いのですね。

がんの患者さんだと、神経の痛みが合併していて、温めると緩和されることもあるため、温かい湿布が向いているケースがしばしばあります。

トウガラシエキスの主成分であるカプサイシンの貼付剤も海外では研究されています。

しかし、カプサイシンの貼り薬は相当高濃度ではないと効果を示さない(→8%)のですが、例えば日本のMS温シップは成分0.165g/100g程度しかトウガラシエキスが入っておらず、カプサイシンの強い鎮痛効果を期待するのは難しいかもしれません。

そのため、冷たい・温かいを問わず、効く方を使って良いでしょう。

理論的には慢性痛には温かい湿布が良いわけですが、実際、頭頸部がんの患者さんでも冷湿布を非常に好まれ、結構良くなると仰る方もいます。

合ったものを使うのが一番です。

なお、湿布は年々査定が厳しくなっており、私のような小規模の開業医だと死活問題です。

経営状態が安定している病院のほうが、快く出してくれるかもしれませんね。

 

湿布薬の副作用は? 血中の移行は?

局所のかぶれなどは問題になります。

また皆さんが気になるのが、血中への移行だと思います。

内服薬との比較では、一度に20枚程度貼らないと内服薬と同じ血中濃度にはならないそうです。

しかし、ロコアテープという貼付剤は要注意です。

ロコアテープは2枚貼ると、経口薬と同じ濃度になるとのことで、注意が必要です。

一般的な湿布薬では、全身的な副作用はそれほど多くないので、その点は良いですね。

 

まとめ

急性の炎症の痛みには冷たい湿布、慢性的な痛みには温かい湿布と覚えておかれると良いでしょう。

しかし、効く方を使って良いと考えます。

がんの痛みの場合は、「炎症があって慢性的な痛み」という場合もあります。そのため、どちらを使っても緩和される可能性はある程度は存在します。

一般にはがんの痛みは深部であることも多いので、なかなか湿布薬の効果が到達しないこともあるのですが、頭頸部がんなど事例によっては効く場合もあります.

ただがんの痛みの場合は、湿布で粘ってもなかなか緩和されないことが多いため、躊躇なく内服の痛み止めを使ったほうが良いでしょうね。がんの痛みの場合は、医療用麻薬などの鎮痛薬で例外的にくせにほとんどならないので、積極的に使用するのが妥当なケースが多いのです。

よく相談して、自分に合った湿布薬等の処方を受けてもらえればと思います。

 

 

 

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