早期緩和ケア外来とセカンドオピニオン外来の違いとは?
早期緩和ケア外来は純粋なセカンドオピニオン外来とは異なります。
それなのでセカンドオピニオン外来のような単発利用だと、早期緩和ケア外来の持つ良い効果が得られない可能性もあるのです。
セカンドオピニオン外来は、担当医の診断や治療が合っているか、あるいは他の方法があるかを別の専門家に尋ねるものです。
早期緩和ケア外来は、もちろん治療に関しても生活の質の観点からの助言はもらえますが、それよりも継続定期受診で良い効果を期待するものです。
早期緩和ケア外来は定期受診がベストです。
1、2回で目立った効果を体感できなくても、継続することが大切です。
それはしっかりとした医学研究でそれが実証されている根拠があるためです。
そのことに関して皆さんにお伝えします。
◎ 定期受診で生存期間が延長
早期緩和ケアの大切さが言われるようになったのは、2010年のある論文(Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer.)です。
この研究では、最低月1回で、継続的に緩和ケア外来に通っています。
それで生活の質が向上し、うつが減り、生存期間が長いことが示されたのでした。
その生存期間の延長は、1つのがん治療に匹敵するものだとされています(それなので大きなインパクトがありました)。
大切なこととして、生存期間が相対的に長くなかったほうの群も「自分が必要と思えば緩和ケアを受けられた」のです。それなのに、感じている必要性と関係なく定期的に緩和ケアを受診したほうが生存期間が長かったのです。つまり、必要性を感じる毎に受けているのでは不十分かもしれません。
◎ 回数が少なすぎると効果がなかった
また、かかった回数が少ないと効果を得られていない結果の論文(Randomised clinical trial of early specialist palliative care plus standard care versus standard care alone in patients with advanced cancer: The Danish Palliative Care Trial.)もあります。劇的な効果を期待するのではなく、回数を重ねた受診での地道な改善が良い結果に結びつくことが考えられます。
◎ なぜ話をするだけで、生存期間が延長したり根治したりするのか
それはがんを退けるのは、薬剤等だけではないからです。そして治療自体、心身が弱っていれば続けられませんし、効果を得られないこともあるでしょう。早期緩和ケアにおいては、症状緩和(不安などの解消も含む)の他にも、ストレスのコーピングや治療の意思決定の支援、アドバンス・ケア・プランニングなども含まれます。これらの要素が話し合われる中で、正しい決断を支援し、生存期間延長につながってゆくと考えられます。
◎ なぜ必要時ではいけないのか?
旧来の緩和ケアにおいては、「困ったらかかる」というのが標準的でした。しかしそれは、往々にして、問題が大きくなってしまうことを招いてきました。例えば苦痛や不安も、一刻も早く対応することで、難治化を防ぐことができます。
そして、問題は一度解決したように思えても、時間が経過すると何らかのものが起きてくるのがむしろ標準的です。また善悪ではなく、誰もが思考や行動の癖がありますが、時間が経過するとまた良くない病気との向き合い方に戻ってしまうこともある可能性が存在します。だからこそ、定期的に受診して、よりうまく病気と対峙できる姿勢へ変えてゆく必要があるのです。
◎ 1回入院しなければもとは取れる
そうはいっても、当院は保険外併用療養費がかかるので、お金を無駄にしたくないという気持ちは理解できます。
一方で、症状緩和が拙劣だと、すぐに入院になるという事実があります。
実際、症状のマネジメントが不十分で、本当は外来診療で完結したものが入院となってしまっているケースもありますね。
1回入院すれば、すぐに高額療養費制度の上限(例えば8万円以上)かかりますし、急な入院だと差額ベッドに入ることがあるかもしれません。
緩和ケアを行っている群では、入院する頻度が20%近く下がるというデータ(Association between palliative case management and utilization of inpatient, intensive care unit, emergency department, and hospice in Medicaid beneficiaries.)もあります。
先に緩和ケアに投資をするのは気が引けるかもしれませんが、1回入院するのを防ぐだけで、当院の場合(毎月通院だとしても)おおよそ1年分のもとは取れることになります。つらい症状に適切に外来段階で対処されなければ、入院となる可能性があります。しっかりとした苦痛緩和介入で入院が回避できれば、取り戻せるのです。
このように基本的には、時間をかけて良い方向に自然に経過が向いてゆくようにアシストするものです。
そのため、劇的な改善よりも、知らず知らずに良い経過や心身になっていた、というような形になることが多いです。
継続的にかかることが、良い結果をもたらしてくれます。
そのことが、早期緩和ケアのメリットを最大限に活かすためにとても重要なことです。
逆に追い込まれれば追い込まれるほど、人は時として一発逆転を目指します。
緩和ケアの受診を遅らせたり、とても困ったらようやく受診するというのは、「問題を未然に避ける」「長期生存するために万難を排する」という効果を得られない可能性もあるため、注意が必要なのです。良い効果は一発逆転思考では得られにくいのです。