バイコディン・ヒドロコドンとは何か?
バイコディンとヒドロコドンとは何か、お知りになりたい方がここをご覧になっていると思います。
バイコディンとヒドロコドンは、オピオイド薬です。
オピオイド薬については下記で説明しています。
バイコディンとヒドロコドンは、日本では発売されていません。
けれども、アメリカでは大変よく使われています。
ただアメリカは鎮痛薬に関しては、「やりすぎ」な国なので、鎮痛薬絡みで大きな問題を引き起こしています。
参考;タイガー・ウッズに処方された鎮痛剤 エミネムも服用「”あ~”っていう気分」
「米国でオピオイド系鎮痛剤により中毒状態になっているのは190万人」とあります。
参考;タイガー・ウッズの「鎮静剤依存」が日本人主婦にもまん延か!?
「アメリカ赴任の夫についていく妻が現地でバイコディンを処方され、その効き目に魅了されてしまうケースがあるのです。アメリカでは肩こりも“ショルダーペイン”(肩の痛み)として鎮痛剤で抑えようとするなど、鎮痛剤への抵抗感が少ない。それに慣れてしまうとなんでもかんでも鎮痛剤を頼るようになりがち。しかしバイコディンには日本では法律違反となる成分も含まれており、帰国の際に持ち帰ることはできません」
肩こりで鎮痛薬はすごいですね。
なお勘違いしてはいけませんが、がんの患者さんのがんの痛みに、医療用麻薬を用いても、中毒(精神依存)にはなりません。
しかし、痛みを感じたら何でもかんでも医療用麻薬を用いるのは、依存を引き起こす可能性があり、社会問題となります。
私も何度か北米の状況と日本の差異について紹介しています。
トヨタ女性役員問題で脚光を浴びたオキシコドン 改めてオキシコドンを知る やめられない止まらない?
米国と日本のオピオイドへの意識の違い 続・トヨタの役員のオキシコドンの件 精神依存について
適切な痛みに用いれば医療用麻薬はくせにもならず、恩恵を受けることができますが、そうではない痛みにまで使えば個人的にも社会的にも弊害が多くなりますので注意が必要です。
バイコディン・ヒドロコドンの効果と副作用
バイコディン・ヒドロコドンの効果
バイコディンとヒドロコドンの効果では、下記のブログ記事で解説したことがあります。
タイガー・ウッズ バイコディンとは? モルヒネとの換算は? 臨床オピオイド使用の一専門家が概説
ヒドロコドンはコデインから生成します。
コデインは日本でも咳止めとして処方薬として広く使用されています。リン酸コデイン、略してリンコデと呼ばれますね。
なお、この咳止めのコデインですが、体内でモルヒネに変換されて、効果を発揮しています。
ヒドロコドン自体も鎮痛活性がありますが、代謝されてノルヒドロコドンとヒドロモルフォンになり、そのうちヒドロモルフォンが鎮痛活性を示します。
一方で、ノルヒドロコドンは活性がないとされてきましたが、最近だと作用があるという見解もあります。
参考;In Vivo Activity of Norhydrocodone: An Active Metabolite of Hydrocodone(英語)
なおヒドロモルフォンは、日本で近年発売されたナルサス、ナルラピド等の成分です。
ヒドロコドンは、それ自体及び代謝されたヒドロモルフォン等が身体に作用することになります。
このヒドロコドンにアセトアミノフェン300mgを加えたものが、バイコディンです。
薬剤が1種類の単剤ではなく、2種類の合剤となります。
バイコディン錠は3種類あり、1番含有量が少ないもののヒドロコドン量は5mgです。一方でアセトアミノフェンはどの薬剤でも300mgです<参考;http://www.rxlist.com/vicodin-drug.htm#dosage>。
長時間作用型ではないので、4〜6時間毎に服用します(効果発現10〜30分、効果持続4〜8時間とされています)。
最小用量製剤を定時で使用すると、ヒドロコドン量としては20~30mg/日ということになります。
オピオイドは、モルヒネに換算した量で、強度を判断します。
内服モルヒネ30mg=ヒドロコドン20mgです<参考;https://palliative.stanford.edu/opioid-conversion/equivalency-table/>。
初期開始量のヒドロコドン20〜30mg/日を服用するということは、内服モルヒネを30〜45mg/日服用することと同等だということになります。
がんの痛みの場合の、モルヒネの標準的な開始量は20mg/日なので、結構多い量ですね。
効果としては、モルヒネ等と同様にオピオイド受容体という場所に働くことで痛みを緩和します。
ヒドロコドンはコデインの代謝物なので、コデインと同様に咳を抑える作用もあります。
バイコディン・ヒドロコドンの副作用
バイコディンやヒドロコドンの副作用は、両薬ともオピオイド系鎮痛薬なので下記で紹介する医療用麻薬の副作用と同様です。
眠気や便秘、吐き気などが問題となります。
まとめ
どんな薬剤も良い作用と副作用があり、良い効果をできるだけ多く得られ、副作用が抑えられれば望ましいです。
使い方次第で薬剤は薬にもなるし、毒にもなります。
些細な痛みにまで医療用麻薬を用いるアメリカの轍は踏まないことが大切ですが、日本は日本で「我慢しすぎ」及び「鎮痛剤への理解がまだまだ深まっているとは言い難い」という問題があります。
ヒドロコドンやバイコディンは現状日本では必要ないと考えますが、知りたいという方のために情報提供しました。
専門家ほど、薬剤の使用には慎重なものです。
医療用麻薬の専門家が緩和ケア医や緩和薬物療法認定薬剤師です。
治療に迷ったら相談してみると良いと考えます。