貼り薬の医療用麻薬であるフェンタニル貼付剤を使う前に最低限知っておくべき知識について専門医が解説します。
医療用麻薬に貼り薬があることをご存知ですか?
皆さんは医療用麻薬に貼り薬があることをご存知でしょうか?
貼り薬といっても、貼った場所だけ効くものではありません。
湿布等とは違うのですね。
そしてまた、最近の製剤はシールに似ています。
こんなので効くの? と思われる方がいますが、効きます。
そして手軽さから、一般に人気があるようです。
しかも製剤の特徴として、貼り薬に含まれる医療用麻薬のフェンタニルという成分は、特定の受容体にのみ働くため、モルヒネやオキシコドンといった他の医療用麻薬と比較して便秘等が少ないという利点があります。
一方でだからこそ、例えば呼吸困難への効果など、他の医療用麻薬と比べて効果が劣るのではないかとされている症状もあります。
他の医療用麻薬と同様に、何をどう選択するのかは、緩和ケアの担当者の腕の見せ所で、その方に合ったものを選択するのがベストですから、一概に貼り薬が良いとは言えないのです。
フェンタニル貼付剤に最小用量製剤が発売される
先年、フェンタニル貼付剤の一つであるフェントステープに最小用量製剤が追加されました。
下記で書いています。
微調整ができるようになったのは良いことです。
ただ、相変わらず貼付剤から始めることは原則できないことになっており、他のモルヒネやオキシコドンなどから切り替えることになっているので、それは注意が必要です。
ケースによっては貼付剤から開始したほうが良いケースもあると考えられるのですが、保険診療上の原則があるので、その点は使い方に留意を要します。
他にもフェンタニル貼付剤の注意点はいろいろ
◎貼る時にコツがいる
貼り付ける側の面を触ると、貼る人の皮膚に薬剤が付着するので注意が必要です。
◎加温は避ける
お風呂に入ったりすると、吸収が増えて薬効が強く出る可能性があります。
それなので入浴前に剥離し、入浴後に新しいものを貼るのが良いです。
高熱の場合も注意が必要なので、処方医に相談が必要です。
◎終末期の使用に注意
飲めなくても貼れてしまうので、過量となる可能性があります。
特に終末期は過量となっていないかどうか、意識レベルや呼吸回数のチェックをしっかり行う必要があります。
緩和ケアの専門家に関わってもらうことは安全
抗がん剤の専門家が、使うべきところで十分な量の抗がん剤を使用し、逆に問題があるようならば微調整したり使用しなかったりするように、専門家というものは効果を得られる十分量かつ過量になりすぎないように注意して薬を使うものです。
医療用麻薬に関しても同様です。
緩和ケア医はがんの医療用麻薬治療の専門家です。
その点で、専門家だからこそ、医療用麻薬の良い点と限界、副作用を知っているため、過量となるのを避けられる可能性が高まります。
安全に医療用麻薬を使用するためにこそ、早期から緩和ケアの専門家に関与してもらうということが考えられますでしょう。