抗がん剤治療中に出るだるさ
抗がん剤治療中にはだるさが出ます。
一般的な抗がん剤は言うに及ばず、分子標的薬でもだるさが出るものがありますね。最近だとリムパーザ等。
さて、このだるさいかにして対応すれば良いのでしょうか?
そしていつぐらいによく出るものなのでしょうか?
緩和ケアの専門家が解説します。
時期は1週間まで、しかし実際には数日後が多い
抗がん剤治療の副作用は出る時期というものがおおよそわかっています。
ただし個人差もあるので、全員がぴったり当てはまるわけでもありません。
けれども出ている情報は目安にはなります。
投与日 : アレルギー反応、吐き気・嘔吐(おうと)、血管痛、発熱、血圧低下
2~7日 : 疲れやすい、だるい、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢
7~14日 : 口内炎、下痢、食欲不振、胃もたれ、骨髄機能の抑制(白血球減少・血小板減少)
14~28日 : 脱毛、皮膚の角化やしみ、手足のしびれ、膀胱炎、骨髄機能の抑制(貧血)
だるさは一週間程度までが多いのですね。
もちろんそれより長引く方もいます。
そして意外に、抗がん剤治療の当日や翌日にはそれほどだるさが強くない方も多いです。
これは抗がん剤治療を受けたことがある方はすぐに理由がわかるかもしれません。
そう、吐き気止めにステロイドを使用しますので、それで倦怠感が緩和されることが多いのですね。
それなので、吐き気止めが終わる数日後から1週間程度までがだるさの強い時期となります。
ただ、例えばリムパーザのようにずっと継続する薬剤など、ずっと倦怠感が出る場合もありますね。
一般的な、何週間かに1回の抗がん剤治療の場合は、上記のように数日後にピークを迎えます。
抗がん剤治療が始まったら、日記のような冊子を渡されることが多いと思いますので、それなどを有効に活用して、副作用等を記載してみましょう。
だいたい何日目にどのような症状が出る、ということがわかれば、次のクールでも同じように症状が出ることがある程度は予測可能です。
それなので、だるさが強い時期等には、重要な予定を入れないようにするなどの工夫をすることができるでしょう。
さて次は対策です。
抗がん剤治療のだるさ対策
抗がん剤治療のだるさをどのように改善したら良いのでしょうか。
残念ながら、薬では保険適用のある良いものがありません。
それなのでケアが中心になりますが、その効果は一定以上期待できます。
ただその前に、倦怠感の原因として他の症状や要因が隠れていないかをしっかり評価することが必要です。
そのため難渋するだるさは、しっかり緩和ケア医にかかって医学的な評価(アセスメント)を受けるほうが良いでしょう。
例えば、痛みや貧血、不眠や抑うつが原因となっていないかをチェックすることは重要です。
これらの病態は倦怠感に関係します。
医療用麻薬も過量だと倦怠感につながりますので注意が必要です。
さてだるさの治療でまとまっているもの。
それは全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)の倦怠感のガイドラインです。
それが下記です。
Cancer-Related Fatigue(2018年の最新版。ただし英語)
英語が得意な方は読んでもらうと良いでしょう。
ただちょっと英語は……という方もいらっしゃると思います。
ご安心ください。
なんとこのガイドライン、旧版は日本語訳されています。
なお「癌に伴う」とありますが、がん治療による倦怠感も含まれます。
旧版と新版で細部をチェックすると違う部分もあるのですが、大きな枠組みはそれほど変わっていないと思います(個人的意見)。
それなので2008年版の日本語をざっと読むのでも、一般の方はそれなりの情報が得られるでしょう。
なお、がん治療中の倦怠感の対策は下記となります(一部拙訳)。
◯倦怠感の水準をモニタリングする
◯すべきことの優先順位を決める
◯ペースを整える
◯任せられることは人に任せる
◯エネルギーが高い時間にやる活動をリストアップする
◯器具を使って労力を減らす
◯不要不急の活動は後回し
◯昼寝は45分以下(★2018年版では1時間未満)
◯スケジュールに基づいた日課を行う
◯一度に取り組む活動は1つにする
◯気晴らしをする(ゲーム、音楽、読書、社交活動等)
このようにエネルギー配分を考えて行動することが良いとされています。
また最近の考え方では治療中でも運動療法を行ったほうが良いことが明確化してきているので、よく担当医等に相談しましょう。
まとめ
抗がん剤治療中の副作用のだるさの時期は、数日後から1週間程度までが多いです。
改善法はエネルギー配分や運動が中心となり、薬よりもケアが主流です。
倦怠感は、見過ごされがちなつらい症状です。
担当医とよく相談する他、原因が多岐にわたるので、改善が乏しい場合は緩和ケアの専門家と相談することが勧められます。