リムパーザ(オラパリブ)とは?
ここをご覧の皆さんの中にはリムパーザを使用されている方もいらっしゃるでしょう。
一方で、リムパーザとは何かよくわからず、知りたいという方もいらっしゃるかもしれません。
現在、乳がんと卵巣がんに使われているがん治療の新薬リムパーザの副作用と対処について解説します。
なお、リムパーザ自体については、下の記事で解説しています。
卵巣がんの場合の適応症は「プラチナ系抗がん剤感受性ありの再発卵巣癌における維持療法」でありBRCA遺伝子変異陽性であることを問われないのに対し、乳がんの場合の適応症は「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」となり、BRCA遺伝子変異陽性でないと使用できません。
リムパーザはPARP阻害薬という種類になります。
PARP阻害薬のPARPとは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)です。
DNAの修復の仕組みの1つを働かないようにすることで効果を発揮します。
一般的な抗がん剤とは違う系統の薬剤ですね。
リムパーザの副作用は?
リムパーザは2018年に発売された薬です。
そのため、まだ日本語の情報が十分広まっていません。
一方で、リムパーザを使用されている患者さんにも何人も通って頂いていますが、だるさや吐き気、下痢、胃痛などの症状を訴える方も少なくない印象があります。
副作用対策の良い方法がないか探していたところ、良い英語文献を見つけました。
下記のものです。
ここから紹介します。
まず、副作用の頻度は、プラセボと比較して、
吐き気 68% vs 35%
だるさ 49% vs 38%
嘔吐 32% vs 14%
下痢 23% vs 23%
貧血 17% vs 5%
胃痛 16% vs 9%
でした。下痢は差がなかったのですね。
しかし他の諸症状は軒並みリムパーザ使用群が高いです。
リムパーザの副作用対策は?
上述の文献を参考に、対処法をそれぞれ記します。
① 吐き気、嘔吐
薬物療法としてはノバミンやロラゼパム(ワイパックス)が挙げられています。
吐き気や嘔吐が改善するまでリムパーザを一時休薬し、以後再開することや、それがうまくいかない場合はリムパーザを減量することなどが対処法として提示されています。
個人的な意見ですが、ノバミンが挙げられているということは、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」に対して保険適用で、強い制吐作用を持つオランザピン(商品名ジプレキサ)も効くことが想定されますね(リムパーザには保険適用外と判断されてしまうとは思いますが)。
② だるさ(倦怠感)
薬物療法としては、精神刺激薬が挙げられています。
日本では使用できる薬剤は限られ、精神刺激薬は処方経験のある緩和ケアの熟達した専門家への相談が望ましいでしょう。
吐き気や嘔吐と同様に、症状(だるさ)が改善するまでリムパーザを一時休薬し、以後再開すること、それがうまくいかない場合はリムパーザを減量することなどが対処法として提示されています。
③ 下痢
薬物療法としては、ロペラミドが挙げられています。
食事療法も必要です。
下記の乳がん治療薬ベージニオの下痢対策で述べているのと同じ内容です。ご参照ください。
④ 胃痛
薬物療法として、プロトンポンプ阻害薬の早期開始が挙げられています。
食品を冷たくまたは室温に調整すること、苦味のある肉には甘い風味を加えることや口腔衛生を保つことなどが勧められています。
まとめ
卵巣がんおよび乳がんの新薬であるリムパーザで副作用を自覚している患者さんがいらっしゃいます。
ブログで紹介しておられる方もいますね。
まだまだ日本での歴史が浅い薬剤なので、情報が出回っておらず、副作用で困っている方がいらっしゃることを拝見しています。
上述のように、それぞれの症状に好適な対応法があるので、腫瘍治療の専門家やがん治療に詳しい早期からの緩和ケア医と相談するのが良いでしょう。