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卵巣がん 緩和ケア

オラパリブ(リムパーザ)・ニラパリブ(ゼジューラ)の効果

卵巣がんとリムパーザ、ゼジューラ

ニラパリブ(ゼジューラ)が2020年9月承認となりました。この記事は2018年末に書いたものですが、とうとうという感じですね。

ニラパリブについても新たに説明を加えております【2020年9月7日改訂】。

オラパリブ・ルカパリブ・ニラパリブ!

少し前、

アテゾリズマブ・アベマシクリブ・アルペリシブ!

の解説をしました。

上記は乳がんの新薬でした。

この記事では、オラパリブ・ルカパリブ・ニラパリブを解説します。

このうちオラパリブは商品名リムパーザで2018年に発売されています。

これらは卵巣がんの新薬群です。

なお、卵巣がん一般については、下記のがん研有明病院のサイトがよくまとまっています。

卵巣がん/がん研有明病院

 

 

オラパリブ等はPARP阻害薬

オラパリブ等はPARP阻害薬です。ニラパリブもPARP阻害薬となります。

PARP阻害薬のPARPとは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)です。

上述のがん研有明病院のサイトから引用します。

オラパリブはプラチナ感受性再発卵巣がんに対し、カルボプラチンを含んだ抗がん剤を行い、治療効果が得られた卵巣がんに対し、その後もよい状態を維持するために用いる飲み薬です。オラパリブの服用は、抗がん剤治療が終わってから始めます。卵巣がん細胞では遺伝子(DNA)修復に関係する仕組みのひとつが働いていないことが多くありますが、残った一方の仕組みでDNAを修復することできれば、がん細胞は生き残ることができます。リムパーザは、DNAの修復の仕組みの1つを働かないようにする薬です。ただし正常な細胞では修復の仕組みが片方残るため、細胞は生存できます。オラパリブが、もともと片方しか修復の仕組みが働いていなかったような卵巣がん細胞に作用した場合には、DNA修復の仕組みが両方とも働かなくなるため、DNAの傷は修復されずに細胞死に至ります。オラパリブに頻度の高い副作用は吐きけ、貧血、疲労などで、まれに間質性肺疾患が現れることがあります。

DNAの修復の仕組みの1つを働かないようにする薬がPARP阻害薬です。

副作用は、悪心66.7%貧血39.0%疲労29.7%、嘔吐25.6%、無力症24.1%、味覚異常23.1%等です。

医療用医薬品 : リムパーザ

ニラパリブは貧血よりも血小板減少が多く報告されるなど、各PARP阻害薬により副作用が異なります。

値段でいうと、オラパリブ(商品名リムパーザ)は600mg/日なので、薬価は(23730円/日×保険の割合)が1日にかかります。もちろん高額療養費制度があるので、支払いの上限が決まっており、莫大な出費が必要となることはありません。

 

オラパリブの効果のほどは?

BRCA遺伝子変異陽性の高悪性度上皮性卵巣がん等では、

無増悪生存(PFS)期間中央値は、オラパリブ(リムパーザ)錠群(19.1カ月)がプラセボ錠群(5.5カ月)と比べ有意に延長し(p<0.0001)、オラパリブ(リムパーザ)錠群の増悪または死亡のリスクはプラセボ錠群より70%低下した(ハザード比(HR)=0.30)

とのことです。

参考;BRCA変異陽性再発卵巣がん 錠剤型のオラパリブ(リムパーザ)がプラチナ製剤後の維持療法で病勢沈静

また、BRCA遺伝子変異状況を問わず行われた試験では、オラパリブはプラセボとの比較でPFSを改善したことが示されています(PFS中央値はオラパリブが8.4カ月、プラセボが4.8カ月)

参考;卵巣がん治療ガイドライン2020年版 CQ18改定案

今後の展望としては、血管新生阻害薬の併用、他の分子標的薬の併用、免疫チェックポイント阻害薬の併用も研究されています。

参考;卵巣がんのPARP阻害薬(オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブなど)、より多くの患者が有効性を享受するための治療戦略

卵巣がんは組織学的に4種類の腺癌に分けられますが、旧来の抗がん剤治療に比較的感受性が高い漿液性腺癌、類内膜性腺癌に比べて、日本では20%以上の頻度がある明細胞腺癌及び粘膜性腺癌は感受性が低いといわれていました。

新規の治療薬・治療法が、化学療法抵抗性の卵巣がんにも奏効するのが俟たれます。

 

ニラパリブと2020年9月の最新状況

今回、ニラパリブ(商品名ゼジューラ)の適応が通ったのは、

「卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」

「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」

「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣がん」

とのことです。実はこれはオラパリブ(商品名リムパーザ)の適応とは少し異なります。

オラパリブの適応は下記であり

「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」

「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」

「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」

ニラパリブはBRCA遺伝子変異陽性でなくても使用可能であること(対象範囲が広いです)、「相同組換え修復欠損を有する」例に適応があるなどです。

ニラパリブは以前の研究でBRCA変異がない人でも無増悪生存期間が9.3ヵ月(プラセボ3.9ヵ月に対して)とされています。

Niraparib Maintenance Therapy in Platinum-Sensitive, Recurrent Ovarian Cancer

また「相同組換え」とはDNA二本鎖の両方の鎖に起きた有害な切断を正確に修復するために生体内で行われているものであり、この修復機能が欠損することは修復が非効率となってがんにつながる可能性があります。

これに関してはMyriad myChoice コンパニオン診断検査で検出可能です。

なお、ゼジューラは1日1回経口投与です(リムパーザは1日2回)。

卵巣がんは決して治療薬が豊富な腫瘍ではなく、治療選択肢が広がることから朗報と考えられます。

 

まとめ

オラパリブは「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」に対しても承認されました。

また、卵巣がんでもBRCA遺伝子変異陽性群での無増悪生存(PFS)期間中央値がより長いことが知られています。

参考;卵巣がん治療ガイドライン2020年版 CQ18改定案

ニラパリブも使用可能となることで治療選択肢が増えるのは良かったです。

卵巣がんも分子標的薬等が適用されるようになりました。

治療の副作用などにも対処してがん治療を支える早期緩和ケアの並行もより重要となるでしょう。

 

 

 

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