がんと診断され、治療を続けている中で、
- 誰に相談すればいいかわからない
- 主治医が事実上いない
- 話を聞いてもらえない
- 次の一手が見えない
そんな状態に置かれてしまう方がいます。
最近、こうした状況を
「がん難民」と表現することもあります。
これは決して珍しいことではありません。
がん難民とは、特別な人の話ではない
がん難民とは、
必ずしも医療を受けていない人のことではありません。
しばしば、
- 病院には通っている(複数という場合もあります)
- 治療も受けている
- でも「自分のことを診てくれている」という感覚が持てない
という状態である場合も存在します。
つまり、
医療の中にいながら、孤立してしまっている状態とも言えるかもしれません。
なぜ、がん難民になってしまうのか
理由は一つではありません。
- 主治医が忙しすぎて十分に話せない
- 治療の選択肢が尽きてきた
- 症状はつらいが「治療対象ではない」と言われた
- 転院や紹介がうまくいかなかった
- 自らが望む治療を受けたため、主治医の管轄から離れてしまった
- ある治療を受けたことにより、うちの病院ではもう診られませんと言われた
多くの方が、
誰の責任でもない形で、行き場を失っていきます。
「診てくれる医師がいない」と感じる瞬間
患者さんから、実際によく聞く言葉があります。
「どこに行っても、様子を見ましょうと言われるだけ」
「相談しても、治療の話しかされない」
「この先のことを聞くと、話題を変えられる」
こうした体験が重なると、
医療に対する不信や諦めが生まれてしまうこともあるのは事実です。
がん難民=見捨てられた、ではありません
ここで大切なことがあります。
がん難民になったと感じることは、
見捨てられたという意味ではありません。
多くの場合、
- 医療の役割分担
- 治療中心の医療体制
- 「誰が全体を見るのか」が不明確
といった構造の問題が背景にあります。
緩和ケアが関われる余地
緩和ケアは、
「治療が終わった人の医療」ではありません。
- 症状がつらい
- 気持ちが整理できない
- 今後の見通しを一度立ち止まって考えたい
こうしたときに、
治療とは別の軸で、全体を見直す医療です。
緩和ケアでできること
緩和ケアでは、次のようなことを一緒に行います。
- いま何が一番つらいのかを整理する
- 治療をどう位置づけるかを考える
- 主治医にどう伝えるかを言葉にする
- 必要であれば、医療機関選びの整理をする
「答えを出す」よりも、
状況を整理し、孤立をほどくことを大切にします。
がん難民だと感じたら、立ち止まっていい
誰かに相談することは、
甘えでも、依存でもありません。
むしろ、
一度立ち止まって考え直す力がある
ということです。
まとめ
がん難民になったと感じることは、
あなたが弱いからではありません。
医療の中で、
一人で抱えきれなくなったサインです。
そのサインを無視せず、
「話を聞いてもらえる場所」を探すことは、
とても自然な行動です。














