――緩和ケア医の視点からお伝えします。
「検索しなければいい」と分かっているのに、
気づくとまた同じ言葉を入力している。
- がん 経過 悪い
- がん 余命
- 抗がん剤 効かなくなった
検索するたびに不安は強くなるのに、
なぜ人はこの“つらくなる検索”をやめられないのでしょうか。
これは意志の弱さの問題ではありません。
脳と心の自然な反応です。
不安になる検索は「確認行動」です
医療の現場で多くの患者さんを診ていると、
不安が強い方ほど、同じ検索を何度も繰り返す傾向があります。
これは心理学的には
「確認行動」と呼ばれるものです。
- 最悪の事態が起きていないか
- もっと悪い情報が出ていないか
- 見落としている事実はないか
頭では「もう十分調べた」と分かっていても、
不安がある限り、脳は確認をやめてくれません。
なぜ「悪い情報」ばかりに目がいくのか
人の脳には、
危険を優先的に探す仕組みがあります。
これは生き延びるために必要な本能です。
そのため、検索結果に
- 悪化した話
- つらい経過
- うまくいかなかった体験談
が並ぶと、
無意識のうちにそこへ注意が集中します。
良い経過の記事があっても、
脳は「そちらより危険情報を確認しろ」と命令してくるのです。
情報を集めているつもりで、実は不安を強めている
検索を繰り返していると、
一時的に「調べた」という安心感が得られます。
しかしそれは長続きしません。
なぜなら、
ネット上の情報は断片的で、文脈がないからです。
- 今のあなたの状態に合っているか
- 医学的にどの程度の話なのか
- 例外なのか、一般的なのか
そうした整理がされないまま、
不安だけが積み重なっていきます。
主治医に聞けない不安ほど、検索に向かいます
「こんなことを聞いたら嫌がられるかもしれない」
「忙しそうで聞けなかった」
そうした思いから、
本当の不安が置き去りになることは珍しくありません。
その行き場のない不安が、
夜中の検索につながっていきます。
検索は、
誰にも遠慮せずに不安をぶつけられる場所でもあるのです。
緩和ケア医が大切にしている視点
緩和ケアでは、
「正しい情報を与えること」以上に、
不安の正体を一緒に言葉にすることを重視します。
多くの場合、検索の奥にあるのは、
- 本当は何が一番怖いのか
- どこまで分かれば安心できるのか
- 今、誰に支えてほしいのか
そうした問いです。
そこが整理されると、
自然と検索の回数は減っていきます。
「検索をやめる」のではなく「不安を整理する」
無理に検索をやめようとすると、
かえって不安は強まります。
大切なのは、
検索の代わりに、不安を言葉にできる場所を持つことです。
それは主治医かもしれませんし、
セカンドオピニオンや緩和ケアかもしれません。
「治療を変えるかどうか」とは別の話です。
不安を扱う医療は、治療と並行して行えます。
今の状態は「助けを求めていいサイン」です
もし、
- 同じ検索を何度も繰り返している
- 夜になると不安が強くなる
- 読むほどに怖くなってしまう
そんな状態なら、
それはあなたが弱いのではなく、
一人で抱えるには重すぎる不安があるというサインです。
最後に
検索し続けてしまうほど、
あなたは自分のことを大切に考えています。
だからこそ、
その不安を一人で処理し続けなくていい。
緩和ケアは、
症状だけでなく「考えすぎてしまう心」も支える医療です。
















