がんの診療の現場では、家族のほうが先に強い不安を抱くことは、
はじめに
がんの診断や治療が進む中で、
- 本人は比較的落ち着いている
- でも、家族のほうが不安そう
- 何度も同じ質問をされる
- 空気が重くなってしまう
そんな状況に心当たりはありませんか。
実はこれ、
とてもよくあるパターンです。
そして決して、
「家族が弱い」わけでも
「本人が冷たい」わけでもありません。
なぜ家族のほうが先に不安になるのか
理由はいくつかあります。
① 情報を“断片的に”受け取っている
家族は、
診察のすべてに同席できるとは限りません。
そのため、
- 本人の表情
- 断片的な説明
- ネットで調べた情報
これらをつなぎ合わせて、
想像で不安を膨らませてしまうことがあります。
② 「支えなければならない」立場にある
家族は、
- 動揺してはいけない
- 弱音を吐いてはいけない
- しっかりしなければ
そう自分に言い聞かせながら、
実は強い緊張状態に置かれています。
その緊張が、
不安として表に出てくることは珍しくありません。
③ 本人より先に「最悪の未来」を想像してしまう
本人が「今」に集中している一方で、
家族はつい、
- もし悪化したら
- この先どうなるのか
- 自分は何ができるのか
と、先の先まで考えてしまうのです。
家族の不安に、本人が疲れてしまうこともある
よくあるのが、
- 本人が家族を気遣って本音を言えなくなる
- 家族の不安をなだめる役割を担ってしまう
- 「自分のほうが患者なのに」と感じてしまう
こうした状態です。
これは、
本人にとっても家族にとっても、
つらい構図です。
「誰の不安か」を切り分けることが大切
このようなとき、
一番大切なのは、
不安を一つにまとめないことです。
- 本人の不安
- 家族の不安
これらは、
似ているようで、まったく別のものです。
同じ場所で、
同じ相手に、
同時に整理しようとすると、
どうしても無理が生じます。
家族の不安も含めて相談できる場所
緩和ケア外来には、
- 本人だけ
- 家族だけ
- 本人と家族一緒
さまざまな形で相談に来られる方がいます。
治療を決める場ではなく、
「気持ちを整理するための場」として使うことで、
- 家族が落ち着く
- 本人の負担が減る
- 主治医との話し合いが楽になる
そうした変化が起こることも少なくありません。
最後に
家族のほうが先に不安になっているとき、
それは「おかしなこと」ではありません。
それだけ、
大切に思っている証拠でもあります。
もし今、
- 家族の不安にどう対応していいかわからない
- 本人も家族も疲れてきている
そう感じているなら、
一度、治療とは別の場所で話す時間を持つことも、
大切な選択肢の一つです。
















