がんの告知は、多くの方にとって人生で最も大きな衝撃の一つです。
「どうしたらいいのかわからない」「これからの生活が不安で眠れない」
そのような声を外来でも数多く伺います。
この記事では、緩和ケア医として長年がん患者さんとご家族を支えてきた経験から、告知後の心の揺れをどう整理し、どう歩みを進めていけばよいのか をお伝えします。
1. 告知後に感じること──“正常な反応”です
がんの告知後、多くの方が次のような気持ちを経験します。
何も感じない・現実感がない
急に強い不安に襲われる
夜眠れない、気分が沈む
「どうして自分が?」という怒り
家族の前で平気な顔をしてしまう
これらは すべて正常な心の反応(ノーマル・リアクション) です。
まったく動じない人の方が少なく、揺れるのが自然なのです。
緩和ケアではこの「揺れ」を責めず、押し込めず、
一緒に整えていくこと を大切にします。
2. 心の整理は“段階”で進むもの
一般的に、告知後の心の整理は次のような段階を経ることが多いと言われています。
① ショック
何も考えられない、頭が真っ白になる。
② 否認
「どこかで間違いなのでは?」と感じる時期。
③ 怒り・混乱
治療、仕事、家族のことが一気に不安として押し寄せる。
④ 調整
情報を集め、理解しようとする段階。
⑤ 受容
病気と共に生きるための準備が少しずつ整う。
ただし、順番どおりではありません。
①に戻ることもあれば、④と②を行き来することも自然です。
ここで大切なのは、
「どの段階にいても、それは今のあなたに必要な反応」
ということです。
3. 心の整理に役立つ方法(緩和ケアの現場で本当に使われていること)
① 「感情を言葉にする」
ノートに書く、医療者に話す、家族に打ち明ける。
心の中に置いたままだと、不安は膨らむ傾向があります。
② 「情報を正しく絞る」
ネットでは不正確・古い情報が多く、むしろ不安が強まります。
主治医か信頼できる医療者に相談して、
“今の自分に必要な情報だけ” を受け取ることが大切です。
③ 「今困っていることを一つだけ解決する」
心が揺れていると、全体が見えなくなります。
緩和ケアでは、
今日いちばん困っていることは何ですか?
と尋ね、そこから整えていきます。
④ 「孤立しない」
家族の負担を考えて話せない方も多いですが、
孤立は不安を強める最大の要因のひとつです。
緩和ケア外来は、
“家族には言いづらいことを安心して話せる場所” として機能します。
⑤ 「身体のつらさは早めに対処する」
痛み・吐き気・不眠などがあると、心の整理が困難になります。
緩和ケアでは身体症状のコントロールを通して、心も支えます。
4. 告知後に緩和ケアを使うメリット
緩和ケアは「末期の医療」と思われがちですが、
実は “告知直後こそ効果が大きい” ことが研究で示されています。
◎ 気持ちが整う
◎ 不安や抑うつが軽減する
◎ 生活の質(QOL)が向上する
◎ 医療情報の理解が深まり、意思決定しやすくなる
◎ 治療や生活の見通しが持ちやすくなる
身体症状がなくても受診してよいのが「早期緩和ケア」の特徴です。
5. 家族のための支援も大切です
告知を受けたご本人だけでなく、
ご家族もまた大きな揺れを経験します。
ご家族への支援も早期緩和ケアの重要な役割であり、
一緒に話し合い、支え合うための場を整えていきます。
まとめ ― 告知後の心は“揺れていい”
がんの告知は人生を揺さぶる経験ですが、
その揺れを一人で抱える必要はありません。
緩和ケアは、
病気のつらさを軽くする医療であると同時に、
心を整え、人生の見通しを立てるための医療です。
不安がある方、気持ちの整理が難しい方は、
どうぞ遠慮なく専門外来をご利用ください。
当院では、がん告知後の気持ちや生活の相談もお受けしています
気持ちの揺れの整理
治療と生活の両立
家族への伝え方
今後の見通しの相談
オンライン相談にも対応しています
お気軽にご相談ください。
👉 診療予約はこちらから https://kanwa.tokyo/clinic-information/early-palliative-care













