緩和ケアは「いつから」受けるものなのか?
「緩和ケアは、まだ早いですよね?」
診療や相談の場で、もっとも多く聞かれる質問の一つです。
多くの方が、
痛みが強くなってから
治療ができなくなってから
末期になってから
そう考えています。
しかし結論から言うと、
緩和ケアは“症状が出てから考えるもの”ではありません。
「まだ早い」という考えが生まれる理由
この誤解は、決して患者さんやご家族の責任ではありません。
日本の医療では長く、
治療=治す医療
緩和ケア=治療が終わった後
という構図が続いてきました。
そのため
「緩和ケアを勧められる=もう治療ができない」
と受け取ってしまうのは、とても自然な反応です。
ですが現在の医学では、
この考え方はすでにアップデートされています。
医学的には「早い段階から」が望ましい
海外の研究では、がんと診断された早い段階から
定期的に緩和ケアを受けた人たちは、
生活の質(QOL)が良好
不安や抑うつが少ない
不必要な入院や医療行為が減る
といった結果が示されています。
一部の研究では、
生存期間が延びた可能性すら示唆されています。
つまり緩和ケアは
「最後に受ける医療」ではなく、
治療と並行して受ける“支える医療”なのです。
緩和ケアは「症状を取るだけ」ではない
緩和ケアというと、
痛み止めや吐き気止めのイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、
今の治療をどう理解すればいいか
副作用とどう付き合えばいいか
これから何が起こり得るのか
誰に、何を、どこまで相談すればいいのか
こうした整理のつかない不安や迷いも、
緩和ケアが扱う大切なテーマです。
症状がない時期だからこそ、
落ち着いて話し合えることも多くあります。
では、いつから受けるのが「適切」なのか?
専門医としての結論は、とてもシンプルです。
「迷い始めた時点」が、受けどきです。
主治医の説明が頭に入らなくなった
情報を調べすぎて不安が増えてきた
今の治療方針に違和感がある
家族との考え方の違いに疲れてきた
こうした状態は、
身体の症状がなくても十分な理由になります。
緩和ケアは「治療をやめる」という意味ではありません
よくある誤解ですが、
緩和ケアを受けたからといって、
治療を中止しなければならないわけではありません。
むしろ多くの場合、
治療を続けながら
主治医とは別の視点で支える
という形で関わります。
「切り替える」のではなく、
「支えを一つ増やす」
それが本来の姿です。
まとめ:早すぎる緩和ケアはありません
緩和ケアは、
症状が出てから
治療が終わってから
考えるものではなく、
不安が生じたとき
迷いが出てきたとき
にこそ意味があります。
「まだ早いのでは」と感じている時点で、
実はちょうどよいタイミングであることも少なくありません。
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