緩和ケアに「切り替える」と言われて戸惑ったことはありませんか?
「そろそろ緩和ケアに切り替えましょう」
この言葉を聞いた瞬間、
頭が真っ白になった、という方は少なくありません。
治療がもうできないという意味なのか
見放されたように感じた
何をどこまで覚悟すればいいのかわからない
こうした戸惑いは、とても自然な反応です。
ただし、ここには大きな誤解が含まれています。
緩和ケア=治療をやめる、ではありません
まずはっきりお伝えします。
緩和ケアを受けることは、治療をやめることではありません。
本来、緩和ケアは
抗がん剤治療
手術
放射線治療
と並行して行う医療です。
「治療か、緩和ケアか」という二者択一ではなく、
「治療+緩和ケア」という形が基本です。
なぜ「切り替え」という言葉が使われるのか
現場では今も、
「切り替える」という表現が使われることがあります。
これは多くの場合、
治療の比重が下がる
症状緩和の重要性が高まる
という医療側の事情を短く表現しているだけです。
しかしその言葉が、
患者さんやご家族にとって
「もう終わりなのでは」という印象を与えてしまうことがあります。
実際には、何が変わるのか?
緩和ケアが加わることで変わるのは、
痛みや吐き気、不眠などの症状への対応
副作用へのきめ細かな調整
不安や迷いを言葉にできる場が増える
医療全体を俯瞰して整理できる
といった点です。
一方で、
主治医との関係が切れる
治療が自動的に中止される
ということは、通常ありません。
治療を続けながら緩和ケアを受ける意味
治療中は、
どうしても「病気を抑えること」が中心になります。
その結果、
つらさを我慢してしまう
不安を後回しにしてしまう
本当は聞きたいことを聞けない
こうした状況が生まれやすくなります。
緩和ケアは、
その“こぼれ落ちやすい部分”を支える役割を担います。
「切り替え」ではなく「支えを増やす」
専門医としてお伝えしたいのは、
この一点です。
緩和ケアは、
治療をやめる合図ではありません。
支えを一つ増やす選択です。
治療を続けながら、
安心して今後を考えるための医療。
それが、本来の緩和ケアです。
まとめ:両立は可能か?
答えは明確です。
緩和ケアと治療は、両立できます。
もし
「切り替えると言われて不安になった」
「治療をやめると言われた気がして怖かった」
そんな思いが残っているなら、
一度立ち止まって、整理する場があってもいいのかもしれません。
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