緩和ケアは「いつから受けるもの」なのでしょうか
「緩和ケアは、まだ早いと言われました」
「今は治療中だから、緩和ケアの段階ではないと説明されました」
外来や相談で、最も多く聞く言葉の一つです。
その結果、多くの方が
「結局、いつ受ければいいのかわからない」
という状態のまま、時間だけが過ぎていきます。
「症状が出てから」では、遅いことがある
緩和ケアは
痛みや苦しみが強くなってから受ける医療
だと思われがちです。
しかし現在の緩和ケアは、
- 痛みや症状の予防
- 不安や迷いの整理
- 治療や生活についての意思決定の支援
を含む、早い段階から使う医療です。
症状が強くなってからでは、
本来もっと早く対処できたことが、
間に合わなくなってしまうことも少なくありません。
「まだ早い」と言われる理由
主治医が
「まだ緩和ケアのタイミングではない」
と言う背景には、いくつかの理由があります。
- 緩和ケア=終末期、という古いイメージ
- 病院の緩和ケア資源が限られている
- 「今は治療を頑張る時期」という発想
これらは医療側の事情であって、
あなたやご家族の状態そのものとは必ずしも一致しません。
緩和ケアを考えてよいサイン
次のような状態があれば、
タイミングとしては「十分に早期」です。
- 痛み・息苦しさ・だるさなどが出始めている
- 治療について迷いや不安が強い
- 主治医に聞きたいことが整理できない
- 家族のほうが先に不安定になっている
- 「このままでいいのか」と何度も考えてしまう
これらは、症状の重さとは無関係です。
緩和ケアは「治療をやめる相談」ではありません
緩和ケアを受ける=
抗がん剤をやめる、治療を諦める、
ということではありません。
実際には、
- 治療を続けながら受ける方
- 治療と距離を取りながら考える方
- 今後の備えだけを整理する方
どの立場でも使える医療です。
迷っている「今」が、実は一番良いタイミング
「もっと悪くなってからでいい」
そう思っているうちに、
- 相談する余裕がなくなる
- 選択肢が狭まる
- 心身ともに消耗してしまう
ということは、現場では珍しくありません。
迷っている今こそが、最も意味のあるタイミング
であることも多いのです。
早期からの緩和ケアという選択
当院では、
- 病期や治療段階を問わず
- 「まだ早いかもしれない」と感じている方の相談
を多くお受けしています。
話すことで、
「今は受けなくて大丈夫」と確認できる場合もあります。
それもまた、立派な緩和ケアの役割です。
まとめ
- 緩和ケアに「正解の開始時期」はありません
- 症状が軽くても、迷いがあれば対象です
- 「まだ早い」と言われて迷っている時点で、相談してよい
緩和ケアは、
困りきってから使うものではなく、困らないために使う医療です。
















