がんの不安やつらさは、「弱さ」ではありません
がんと診断されたあと、多くの方が
「不安が止まらない」
「頭の中がずっとざわざわしている」
「気持ちが落ち着く瞬間がない」
と感じます。
それは決して特別なことではありません。
むしろ、ごく自然な心の反応です。
人は、先の見えない状況に置かれると、
心が「常に警戒状態」になります。
がんという診断は、命・生活・家族・将来など、
人生の根幹に関わる問題を一度に突きつけてきます。
不安やつらさが強くなるのは、
あなたが真剣に生きている証拠でもあるのです。
「不安を消そう」とすると、かえって苦しくなります
多くの方が、こう思います。
「前向きにならなきゃ」
「気にしすぎないようにしよう」
「不安になるのはよくない」
でも実は、
不安を消そうとするほど、不安は強くなりやすいのです。
不安は、無理に押さえ込まれると、
別の形で心や体に現れます。
- 眠れなくなる
- 集中できなくなる
- ちょっとした言葉に過剰に反応してしまう
これは意志の弱さではありません。
心が必死にバランスを取ろうとしている状態です。
不安をラクにする第一歩は「整理する」こと
緩和ケアの現場で、私が大切にしているのは、
不安を消すことではなく、整理することです。
多くの場合、不安は混ざり合っています。
- 病気そのものへの不安
- 治療への不安
- 将来への不安
- 家族への負担への不安
- 情報が多すぎることによる混乱
これらが一つの塊になると、
「何がつらいのかわからない」状態になります。
まずは、
不安を言葉にして分けてみる。
それだけで、心の負担は少し軽くなります。
「今の不安」と「先の不安」を分けて考える
不安が強いとき、
頭の中では未来の出来事が一気に押し寄せます。
でも、今この瞬間に起きていることと、
まだ起きていないことは、分けて考えていいのです。
- 今わかっていること
- まだ決まっていないこと
- 将来の可能性の話
これを整理するだけで、
「全部が同時に襲ってくる感じ」は和らぎます。
誰かに話すことは、治療の一部です
「こんな気持ちを話していいのだろうか」
「医師に相談するほどのことではない」
そう思って、
不安を一人で抱え込んでしまう方は少なくありません。
でも、
不安やつらさを言葉にすること自体が、ケアです。
緩和ケアは、
「症状が出てから行く場所」
「治療が終わった人のための医療」
ではありません。
考えがまとまらないとき、
気持ちが揺れているとき、
迷っているときにこそ、
相談してよい医療です。
少しラクになる、という感覚を大切に
がんの不安は、
一気になくなるものではありません。
でも、
- 少し整理できた
- 少し呼吸がしやすくなった
- 少し眠れるようになった
こうした 「少しラクになる」積み重ねが、
心を支えます。
がんと向き合うことは、
強くなることではありません。
無理をしない形を一緒に探すことです。
まとめ
がんの不安やつらさをラクにするために、
大切なのは、
- 不安を否定しないこと
- 無理に前向きになろうとしないこと
- 気持ちを整理すること
- 一人で抱え込まないこと
不安があるままでも、
人は考え、選び、生きていけます。
緩和ケアは、
その「考える力」を取り戻すための医療でもあります。

















