治療の諦め=緩和ケアではない
緩和ケアが末期だとの誤解は、治療の諦めと緩和ケアが同義であるとの解釈を生んでしまってもいます。
実際にいまだ、「これからは緩和ケアの時期です」「あとは緩和で」等の説明が、がん治療の拠点病院でも(医師による差がありますが)まかり通っています。
実はこのような医療者側の言葉のチョイスの良くなさもあり、緩和ケア=治療しないこと、という誤解が再生産され続けてしまっているのですね。
緩和ケアは並行の医療・ケアで、替わりではなく、替えがきかない
このような「切り替え」的な説明は良くありません。
もっとも説明する側(医療者)は、治療がまだないわけではない、それが緩和ケア、というような意味で伝えている(それだと良心の呵責も少なくなる)ようなのですが、聞くほうからすると、良いイメージではありませんね。
緩和ケアは切り替えの医療ではなく、最初から最後まで(あるいは根治まで)並行させるものです。
言い方を変えれば、「替えがきかない医療でありケア」です。
実際に、がん治療等において、副作用を伴う攻撃の治療に対して、守りの医療は不足しています。
攻撃と並行して守りのケアを受けてゆくことが肝要です。
緩和ケアから逃げるのは逆効果に
心身の不調は、治療継続の不能を招きます。
実際に、緩和ケア外来に通うことで、心身の調子を取り戻し再び治療を受けられるようになったりされる方も多くいらっしゃいます。
緩和ケアは末期だから受けたくない、と避け続けると、逆にしたい治療が受けられなくなってしまうことがないとも言えません。
ただ問題は、もう治療ができないほどに身体が弱っているような場合です。
そのような場合は、緩和ケアでも元の状態に戻すのは難しくなります。
それなので、早期からの緩和ケアと異なり、腫瘍の高度進行期などの緩和ケアではできることに制約も生じてきます。
病状が非常に進行しているような場合は、いたずらにがん治療に拘泥することがむしろ命を縮めることもあり、できる範囲での苦痛軽減策を駆使し、適切な選択を支援することによっての延命を目指します。
参考;早期からの緩和ケア外来が目指すもの 余命の延長・予後の改善
しかしこの前段階においては、できる治療を行えるように、抗がん剤等の副作用対策も担当医が行ってくれているものに+αで行うことにより、心身の負担軽減と円滑な治療継続を目指します。
まとめ
緩和ケアを治療中断と捉えておられる方がいます。
確かに緩和ケア病棟やホスピスは、がん治療を中止しないと面談してくれない施設もあるので、治療中断と関連します。
しかし緩和ケア外来は、治療終了とは無関係で、むしろ抗がん剤治療などのがん治療が円滑に送れることを支援する働きもあります。
治療したいという希望があるならば緩和ケア外来に並行して通院するのが良いでしょう。