ロズリートレクが製造販売承認取得
2019年6月18日、ロズリートレクという薬剤が製造販売承認を取得しました。
どのような薬剤なのか、3分でわかるようにがん治療医が解説します。
ロズリートレクは分子標的薬 特定の遺伝子異常があるがん全てが対象
ロズリートレクは分子標的薬という薬剤に属します。
普通の抗がん剤とは異なります。
分子標的薬とは、非常に簡単に言うと、がんを引き起こす遺伝子異常等に作用する薬剤であり、いわゆる「ピンポイント」で効く薬です。
ロズリートレクは、これまでのがん治療薬と異なり「◯◯がんの薬剤」という適用症ではありません。
「成人および小児のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」と、がん種を問わず、NTRK融合遺伝子が陽性のがんに対して適用となります。また世界に先駆けて日本で承認されたとのこと。
このようにがんの種類を問わないがん治療薬の承認は、免疫チェックポイント阻害剤で抗PD-1抗体のキイトルーダに続き本邦2番目です。
NTRKとは神経栄養受容体チロシンキナーゼで、TRK融合遺伝子が出現すると、がん化に影響するとされています。全固形がんの最大1%に関与しているとのこと。
肺がん、胃がん、大腸がんなど一般的ながんでは1%未満と稀な一方で、元々珍しい腫瘍では高率に認められる遺伝子異常であるとのことです。
中外製薬の資料には下記のがん種が挙げられています。
成人や小児の様々な固形がんや肉腫等[乳児型線維肉腫、神経膠腫、神経膠芽腫、びまん性橋グリオーマ、先天性中胚葉性腎腫、悪性黒色腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)、子宮肉腫、その他軟部腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、乳腺分泌がん、唾液腺分泌がん、原発不明がん、肺がん、大腸がん、虫垂がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、胆管がん、膵臓がん、頭頸部がん、等。
頻度はともかく、種類は多く分布していますね。
なお使用にあたっては、中外製薬のがん遺伝子パネル検査「ファウンデーションワンCDx」を用いるとのこと。腫瘍組織が必要となりますね。
なおがんゲノム医療の「NCCオンコパネル」と「ファウンデーションワンCDx」は下記で解説しています。
ロズリートレクの効果のほどは?
ロズリートレクはなんと経口薬です。
今回の承認では下記が使用法となります。
引用;ロズリートレクカプセル100mg/ロズリートレクカプセル200mg
「通常、成人にはエヌトレクチニブ(★ロズリートレクのこと)として1日1回600mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
通常、小児にはエヌトレクチニブとして1日1回300mg/m2(体表面積)を経口投与する。ただし、600mgを超えないこと。なお、患者の状態により適宜減量する」
承認される際には、必ずその背景となる試験があります。
ロズリートレクはSTARTRK-1やSTARTRK-2試験等の結果で承認されています。
STARTRK-1試験では、
NTRK融合遺伝子陽性で100%、ROS-1融合遺伝子陽性で86%の奏効率(完全奏効と部分奏効を合わせて)がありました。
その後行われたSTARTRK-2試験においては、NTRK融合遺伝子陽性の患者で奏効率は57.4%だったとのことです。
ロズリートレクの副作用は?
製薬会社資料によると、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、めまい、下痢、吐き気、知覚異常、呼吸困難、痛み、貧血、認知障害、体重増加、嘔吐、咳、血中クレアチニン増加、関節痛、発熱、および筋肉痛です。
引用;中外製薬の資料
味覚異常(46.0%)、めまい(30.2%)、便秘(28.6%)、下痢(27.0%)、貧血(20.6%)、認知障害・運動失調(28.6%)等が挙げられています。
少々気になる内容ですね。
ロズリートレクのまとめ
どうでも良いですが、ROS1/TRK阻害剤なので、ROS(ロス)リーTRK(トレク)なのでしょうね。
ROS1/TRK阻害剤は世界に先がけて日本で使われるようになるため、実臨床の場に出るのは(治験を除いて)初めてということになりますね。
それなので、まだまだ2019年6月現在では、未知数な部分が多いですね。
NTRK融合遺伝子陽性の患者さんにとっては、経口薬でもありますし、一定以上のメリットがあるでしょう。
新薬なので、未知の副作用が出現する可能性が否定できず、十分かつ迅速な副作用対策が重要です。
支持療法の専門家である病院の緩和ケア部門や早期からの緩和ケア外来等に相談し、苦痛少なく治療が継続できるようにすることが、良い薬効を得るための秘訣と言えるでしょう。