パーキンソン病の緩和ケアについて解説します。
がんに限定しない早期緩和ケア専業クリニックなのですが……誰も取り上げない
いみじくも、イギリスが作った「死の質ランキング」で、「日本の緩和ケアはがんの患者さん中心に診ている」と指摘されています。
正確には、「既存の枠組みはがん患者に焦点を当てており、他の疾患へ緩和ケアを拡大することが難しいです。専門スタッフの数は腫瘍領域のニーズを満たすのには十分ですが、他の病気の患者を支援するには不十分です」
と書かれているのです。
そんな中、当クリニックはがんに限定しない早期緩和ケア外来専業クリニックなのですが、そこを取り上げられたことは「一度もありません」
いかに一般的な興味がないかを物語っていると感じます。
いみじくも、イギリスのランキングの指摘が当たらずとも遠からずなのでしょう。
海外ではパ-キンソン病の緩和ケアについてもサイトが充実
がんの患者さんは緩和ケアの最重要対象の患者さん群と言えますでしょう。
けれども最重要対象の患者さん群は、けっしてがんに限定されません。
今日取り上げるパ-キンソン病の緩和ケアもそうです。
例のごとく、パ-キンソン病で緩和ケア、というと、まるで奇異なことを言っているように日本では思われるかもしれませんが、緩和ケアが発展している地域からすれば、ごく当たり前のことです。
私も以前、パ-キンソン病の緩和ケアについては記事にしています。
ただ、充実しているのはやはり海外サイトです。
いくつか見繕いましたが、下記の欧州パ-キンソン病学会のサイトはよくまとまっていますね。
パ-キンソン病の緩和ケアはどのように役立つのでしょうか?
今は、Google Chromeの日本語訳という必殺技があります。
それで簡単に日本語訳できますね。
欧州パ-キンソン病学会の上述のサイトには、パ-キンソン病の緩和ケアはどのように役立つのか、という項目があります。そのものズバリですね。
その答えは、次のようになります(意訳です)。
「パーキンソン病の進行や症状が治療にうまく反応しなくなるにつれて、日常生活や生活の質の保持がより困難になります。あなたと介護者は、多くの援助を必要とするかもしれません。
パーキンソン病の緩和ケアの主な原則は以下のとおりです。
◯ 良好な症状マネジメントを含む、生活の質に焦点を当てる
◯ 血液検査やスキャンなどの不適切な介入および不必要な薬を中止する
◯ あなたの心理的、社会的、そして精神的なニーズに応える
◯ あなたとあなたの近くにいる人の両方をケアする
◯ あなた、あなたの家族、介護者、そしてヘルスケアチームの間で、オープンかつ繊細なコミュニケーションを維持する
◯ 治療の選択肢やどこで最期を過ごすか等の、あなたとあなたの家族がする個々の選択を尊重します」
要するに、がんの患者さんが緩和ケアを受けるメリットと同じメリットがある、と言えます。
例えば、パ-キンソン病と痛みについて
上のサイトには、概論だけではなく、各症状ごとに対処法が書いてあります。
例えばパ-キンソン病と痛み。
ひとくちに痛みといっても、いろいろな種類があるのはがんと同様です。下記は私が一部を翻訳・追加したものです。
筋骨格痛
筋骨格痛はパーキンソン病の最も一般的な種類の痛みです。アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬、医療用麻薬(名前が挙げられているのはオキシコドン)が有効。理学療法、ウォーミングアップ、ストレッチも有益。1週間に約150分の中程度の身体活動が痛みに対して良いとされています。
中枢性疼痛
パーキンソン病では、絶え間ない鈍い痛みを自覚することがあります。この種の疼痛は「中枢性疼痛」と呼ばれ、パーキンソン病自体に関連しています。パーキンソン病は、身体が痛みを感じる方法に影響を与え、たとえ痛み(の器質的な原因)がなくても身体に痛みを引き起こす可能性があります。この種の疼痛は正しく理解されておらず、治療が困難な場合があります。中枢性疼痛はパーキンソン病の治療で改善することがあります。また、デュロキセチンなどの他の薬も役立ちます。ガバペンチンが治療薬に挙げられることもあります。
神経根性/神経障害性の痛み
四肢、指やつま先に出現する鋭い痛みです。異常な感覚を伴います。鎮痛剤と運動は一般的に痛みを和らげるとされています。
まとめ
パ-キンソン病の緩和ケアにおいても、目的はがんの患者さんと同様で、症状緩和を薬剤等を使って達成し、生活の質が保持されるように良い方法を相談して決定していきます。
パ-キンソン病も神経内科医が熱意をもって取り組んでいますが、そこに緩和ケア医ならではの視点で症状緩和と生活の質の向上を提供できるでしょう。
繰り返しですが、早期緩和ケアクリニックはがんに限定しない緩和ケアを特性としています。
パ-キンソン病に限らず、がん以外の病気も緩和ケアの普及が必要です。