「何もしない」という選択をしているつもりの方へ
がんと診断されたあと、
「今は治療をしない」
「もう少し様子を見たい」
と考える方は、決して少なくありません。
この選択そのものが、間違いだとは私は思っていません。
実際、治療を急がず、
ただ、緩和ケアの現場で長く診療してきた立場から、ひとつだけは
それは、
「何もしない」と「何も決めていない」は、
「何もしない」は、ひとつの“選択”です
医学的にいう「治療をしない」という判断は、
- 病状や進行の見通しを理解したうえで
- 利点と不利益を知り
- 自分なりの理由をもって決める
という、能動的な選択です。
この場合、その方は
「今は治療をしない」
「必要になったら考え直す」
という軸を持っています。
一方で「何も決めていない」状態とは
一方、緩和ケア外来でよく目にするのは、次のような状態です。
- 情報を調べ続けているが、整理できていない
- 医療者に相談しづらく、時間だけが過ぎている
- 「そのうち考えよう」と思いながら、決断を先送りしている
この状態は、選択しているようで、実は選択していない状態です。
多くの方が、
「考えていたつもりだった」
「放置していたわけではない」
とおっしゃいます。
しかし、病気と時間は待ってくれません。
緩和ケアの現場で見てきた「後悔の共通点」
私がこれまで診てきた中で、
後悔を強く口にされる方には、共通点があります。
それは、
「何もしないつもりだった」のではなく、「
という点です。
- 痛みが出てから
- 生活が急に立ち行かなくなってから
- 選択肢が限られてから
「もっと早く話を聞いておけばよかった」
そう言われる場面を、何度も見てきました。
決めることは、治療を始めることではありません
ここで誤解してほしくないのは、
「決める=治療を始める」ではないということです。
決めるとは、
- 今の状態を理解する
- この先に起こりうることを知る
- 自分が大切にしたいことを言葉にする
そのうえで、
「今は治療をしない」
と選ぶことも、立派な決断です。
「何も決めない」状態が一番つらくなる理由
何も決めないままでいると、
- 不安は減らず
- 情報だけが増え
- 周囲の言葉に振り回されやすくなります
結果として、
心も体も、消耗してしまうことが少なくありません。
これは、がんの進行とは別のつらさです。
だからこそ、相談する意味があります
緩和ケアは、
「治療を勧める場所」でも
「諦める場所」でもありません。
- 状況を整理する
- 選択肢を並べる
- 自分の考えを言葉にする
そのための場所です。
「まだ決められない」
「決めたくない」
そう感じている時こそ、相談してよい分野です。
まとめ
「何もしない」と「何も決めない」は、
後悔を減らすために大切なのは、
- どの選択をするかではなく
- 理解したうえで選べているか
迷いがあるなら、一人で抱え込まず、
一度立ち止まって整理することから始めてみてください。


















