抗がん剤治療の脱毛対策に新たな方法が登場
抗がん剤治療の脱毛対策に新しい方法が出ました。
オーサーを務めているYahoo!の記事でも解説しました。
抗がん剤治療の脱毛対策に新たな方法が登場も保険非適用 化学療法の最大の苦痛「脱毛」緩和の良い方法は?
詳しくは上記を参照頂ければと思いますが、名前はPaxman Scalp Cooling システム Orbis及びPaxman Scalp Cooling キャップと言います。
2019年8月現在では保険適用外で、キャップ部分は定価9万円とのことです。
機器は冷却システムとキャップからなっており、冷却システムによってマイナス4℃まで冷却した液をキャップ内に循環させ、継続的に頭皮を冷却します。時間としては、抗がん剤投与開始 30 分前から冷却開始し、投与終了後 90 分以上まで冷却するとのことです。それによって、毛を産生する毛包という場所へ到達する抗がん剤の量を低下させ、毛包内の毛母細胞への障害を軽減し、効果を期待するというものです。
国内の治験では、乳がんの患者さんへの脱毛を引き起こす抗がん剤治療において、2人の医師による判定で、同機器を使用した群では2人の医師両方とも非脱毛と判定した症例は機器使用群で 30 例中 8 例(非脱毛率26.7%)、無使用群では 13 例中 0 例だったとのこと。これが2人の医師のいずれかが非脱毛と判定した症例だと機器使用群 30 例中 18 例(非脱毛率 60%)まで上昇し、一方で無使用群では13 例中 0 例(非脱毛率 0%)だったそうです。
脱毛率で言うと100%→73.3%となりますね。
ただこれは、あくまで2人の医師の判定が一致したという厳密な評価であり、実際はより体感効果は高い可能性もあるでしょう。
例えば、次の論文だと
https://ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29660543
髪が保持できたのが71.0%との評価です。
ところで抗がん剤が頭皮にいかなくて頭皮のがんは大丈夫なの?
ところで、頭皮に抗がん剤の影響が及びにくくすることによって、脱毛を防ぐわけですが、それでひょっとして頭皮への転移が増えたりしないか? という疑問があるでしょう。
私も3700人以上のがんの患者さんを拝見してきましたが、頭皮転移は稀で、あまり見たことがありません。
実際ある研究では、頭皮を冷却した群と頭皮を冷却しなかった群の頭皮転移の発生率はそれぞれ0.61%と0.41%と少なく、また両群は統計学的には差がなかった、すなわちどちらでも頭皮転移の発生はほぼ同等の頻度と言えそうとされています。
他にも頭皮冷却の有無と頭皮転移の研究で、頭皮冷却を使用しても使用しなくても、統計的に死亡率に差がないとするものもあります。
頭皮には抗がん剤がいかないため、頭皮転移が増え、生存に影響する……ということはなさそうです。
副作用は?
他の研究でも、副作用は軽微で深刻なものはなかったと報告されています。
その点では、比較的安心して用いることができるでしょう。
あとはコストと効果の兼ね合いでしょうね。
今後、各々の医療機関がどれだけこの機器を導入してくるか、というところですね。
うりにはなると思うのですが。