肺がんステージⅣとは
ここをご覧の方はご自分やご家族が肺がんステージⅣと診断されて、戸惑っておられるかもしれません。
確かに肺がんのステージⅣであるということは転移があるということになります。
肺がんのステージⅣにはIVAとIVBがあります。
【ステージⅣA】
◯M1a 対側肺内の離れたところに腫瘍がある、胸膜または心膜への転移、悪性胸水<胸水の中にがん細胞がみられること>がある、悪性心嚢水<しんのうすい。心臓の周りにたまった液体(心嚢水)の中にがん細胞がみられること>ある
◯M1b 肺以外の一臓器への単発遠隔転移がある
【ステージⅣB】
◯M1c 肺以外の一臓器または多臓器への多発遠隔転移がある
基本的には、一つの肺を超えた進展や転移があると、ステージⅣになるわけですね。
肺がんは遠隔転移があると、2019年現在の治療では完全に治る(根治あるいは完治する)のは一般に難しくなります。
もちろん多くの患者さんはその事実を知っておられるので、遠隔転移するとお気持ちはつらいのが当然だと思います。
ただ治療も日進月歩です。
確かに現行の医療では根治は難しいですが、生活の質を保持して、できるだけ命が延びれば良いのです。
かつて不治かつ短命だったHIV/AIDSは、今や病気を抑え込んで生涯を全うできるようになりました。
がんもそうなれば良いですし、次々と新たな治療が開発されています。
長く生きられれば、また新たな治療ができてさらに生きられる。
それなので、希望を捨てないで大丈夫です。
さらに、肺がんは分子標的薬(一般的なこれまでの抗がん剤ではなく、がんの増殖を引き起こす特定の分子を標的とする薬)が相対的に発展しているがん種であり、分子標的薬はしばしば転移があっても大きな効果を示します。
選択肢がありますので「もうだめだ」と即断して怪しい治療などに傾倒せず、よく医師等と標準治療について相談することが大切です。
肺がんが転移したらどうするか?
転移する臓器としては、骨、肝臓、脳などがあります。
肺を取り巻く胸膜へがんが及ぶこともあります。
骨ならば痛みが、肝臓ならば右上腹部の異和感が、脳だと神経症状が出ることもありますが、症状がなく定期検査の画像でわかる場合もあります。
肺の腫瘍が大きくなると咳や痰等が出たり、胸膜へ進展すると痛みや胸水等が問題となります。
ただし、転移=末期ではない(ステージⅣ≠末期)ですから、その点はご心配はありません。
また転移病変も、薬物治療が奏効することが知られていますから、肺がんの治療を行うことで、奏効すれば転移した病変(転移巣)も縮小させることが可能です。
脳転移に関しても、分子標的薬が奏効することが示唆されていますし、サイバーナイフ等も含む放射線治療が有効です。
転移がわかったら、まずは治療を行うことになるでしょう。
転移巣にかかわらず原発の肺がんの治療を行います。
肺がんの場合は、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」で治療が大きく分かれていますし、非小細胞肺がんの中にも<扁平上皮がん>と<非扁平上皮がん;代表的なものは腺がん>があり、非扁平上皮がんの中でも特定の遺伝子異常の有無によって再分化されるため、それぞれによって治療が異なります。
それぞれの転移先別の留意点は下記でも解説しています。
肺がんステージⅣの生存期間は?
肺がんステージⅣの生存期間は、全がん協生存率調査のホームページで調べられます。
「全施設生存率」→「くわしいデータ画面」で入力画面に入れます。
あまり見たくない方もいらっしゃると思いますので数字は掲載しませんが、データは約10年程度前のものなので、参考程度にしておくと良いでしょう。
肺がんのステージⅣも以前より治療が進歩しているためです。
再発や遠隔転移が判明した後はうまく病気と付き合うことが重要
再発や遠隔転移が判明した後は、基本的には病気を治す治療というよりも、がん病巣を抑えて、症状を緩和し、治療の副作用を抑えつつ、長期延命を図るというのが治療目的になります。
病気が進行すると、病気自体の症状が出現してきます。
しかし治療が効いている間は、むしろ治療の副作用が問題となります。
副作用は抑えることができるものもあれば、なかなかそうでもないものがありますが、大切なのは何らかの対処法は必ずあるということです。
そのため、よく担当医や、その他のスタッフに対処法を尋ねることが重要です。
ただ大病院の外来は忙しいので、なかなか担当医とよく相談できないという話は伺います。
そのような時に頼りになるのが、緩和ケア外来です。
主としてがん治療の副作用対策を「支持療法」と言いますが、緩和ケアと支持療法は重なります。
治療は長期に及ぶこともあるため、◯良い生活習慣を保つこと、◯抑うつなどに陥ることもあるため気持ちにも注意を払うこと(調子が悪ければ速やかに担当医と相談し専門家につないでもらうこと)、◯副作用対策を十分行いストレスが少なく治療ができるようにすること、などの諸配慮が必要となります。
可能ならば患者会や早期からの緩和ケア外来なども利用し、穏やかに療養できるようにすることが大切だと言えましょう。