■はじめに
神経の痛みは、日常生活にも大きな負担になります。この記事では、痛み治療を専門とする医師が「タリージェ・リリカ・サインバルタ」の違いをやさしく整理し、治療選びの不安を少しでも軽くできるよう解説します。
神経の痛み(神経障害性疼痛)は、
「ズキズキ」「ビリビリ」「焼けるような痛み」が長く続き、
生活の質を大きく下げてしまいます。
本記事では、神経の痛みに使われる代表的な薬
タリージェ(ミロガバリン)
リリカ(プレガバリン)
サインバルタ(デュロキセチン)
の違いを、日常診療で多くの痛みの患者さんを診てきた
“専門医+処方医” の立場から、やさしく整理します。
■この解説の強み
緩和ケア医として 神経障害性疼痛の処方経験が豊富
がん性疼痛・非がん性疼痛どちらも豊富に経験
患者さんからの“実際の効き方・副作用” を数多く把握
医療書の著者として 最新のエビデンスも踏まえた視点
「ネットの情報がまとまっていない」
「結局どれが自分に合うのかわからない」
そんな方に向けて、臨床目線で丁寧に解説します。
■結論(まず最初にわかりやすく)
薬の“系統”で考えると以下の2つに分かれます。
◎タリージェ = リリカ
→ 同じ「α2δリガンド」という種類
→ 効き方・副作用の傾向が似ている
◎サインバルタ
→ 抗うつ薬に分類されるが“痛みにも効く”
→ 作用機序がまったく異なる
すなわち、タリージェとリリカは近い関係、
サインバルタは別方向から痛みにアプローチする薬です。
■タリージェ・リリカ・サインバルタのしくみの違い
●タリージェ・リリカ(α2δリガンド)
神経の興奮を抑えて痛みを和らげる薬です。
脳・脊髄の“痛み信号の過剰”を落ち着かせます。
帯状疱疹後神経痛
糖尿病性神経障害
などでよく使われます。
●サインバルタ(SNRI)
抗うつ薬ですが、
脳の「痛みを鎮めるブレーキ装置(下行性疼痛抑制系)」を強める働きがあります。
糖尿病性神経障害
慢性腰痛症
変形性関節症
に保険適応があります。
作用メカニズムが違うため、“どちらが優れている”ではなく“向き不向き”がある薬です。
■適応症(保険で使える病気)の違い
| 薬剤 | 適応(保険が通る病気) |
|---|---|
| タリージェ | 末梢性神経障害性疼痛(糖尿病・帯状疱疹後など) |
| リリカ | 神経障害性疼痛全般 |
| サインバルタ | 糖尿病性神経障害・慢性腰痛症・変形性関節症 |
※慢性腰痛や変形性膝関節症で痛みが慢性化している場合、サインバルタが選ばれるケースがあります。
■副作用の違い
●タリージェ・リリカ
めまい
傾眠(眠気)
浮腫
体重増加
重要:運転は禁止(眠気による事故リスクが高いため)
タリージェは一部で「リリカより眠気が少ない」という報告がありますが、体感差は人によります。
●サインバルタ
悪心(吐き気)
食欲低下
眠気
口渇
頭痛
※運転は「注意」
飲み合わせ注意の薬が多いため、医師・薬剤師と要相談。
■薬価(1日あたりの費用)
※2025年時点の概算
| 薬剤 | 維持量 | 1日薬価 |
|---|---|---|
| タリージェ | 30mg | 約310円 |
| リリカ | 300mg | 約133円 |
| サインバルタ | 40mg | 約146円(60mgは約186円) |
■医師目線:どれが“最も効く”のか?
✔結論:
“使ってみないとわからない” が正しい
神経障害性疼痛は個人差が極めて大きく、
Aさんにはリリカが劇的に効き、
Bさんにはサインバルタが合う、
ということが日常的に起こります。
✔タリージェは「リリカと同系統の新しめの薬」
大きな性能差は現状では不明。
過度な期待は禁物ですが、
「リリカが合わなかった人にタリージェが合う」
というパターンは臨床であります。
✔がんの神経痛では“オピオイドが優先される”場合も
がん由来の神経痛は通常の神経障害性疼痛と性質が異なり、
オピオイド(医療用麻薬)の方が明確に効くケースが多い。
※「神経痛だからまずリリカ等」とは限らないのが重要ポイント。
■使い方のポイント(専門医からのアドバイス)
✔① 少量から始めて、ゆっくり増量
タリージェ・リリカは特に“めまい・ふらつき”が出やすいため、
少量から慎重に が大原則。
✔② 効果は「すぐ効く」ものではない
十分量になるまで時間がかかるため、
2〜4週間ほど様子を見ることが多いです。
✔③ 併用が必要なケースもある
サインバルタ+α2δリガンド
と併用すると効くケースも。
✔④ やめるときも“急に中止しない”
離脱症状が出る場合があるので、
必ず医療者と相談を。
■まとめ:どの薬が「一番良い」かは人による
タリージェとリリカは同系統
サインバルタは違うアプローチ
適応症、副作用、併用薬の有無で使い分け
神経痛は個人差が極めて大きい
困ったときは遠慮せず医師に相談し、
合う薬を一緒に探すことが最も大切です。



















