「緩和ケア」という言葉を聞くと、
多くの方があるイメージを思い浮かべます。
- もう治療ができなくなったとき
- いわゆる“終末期医療”
- 最後の段階で受けるもの
ですが、これは現在の医療の考え方とは大きく異なります。
この記事では、
「早期からの緩和ケア」について特に多い3つの誤解を整理し、
本来の意味を、緩和ケア医の立場からわかりやすくお伝えします。
誤解①「症状が出てから受けるもの」
これは、もっとも多い誤解です。
緩和ケアは
痛みが強くなってから
つらくなってから
受けるものだと思われがちですが、実際は違います。
早期からの緩和ケアとは
- がんと診断された直後
- 治療の初期段階
- まだ大きな症状がなくても
この時点から関わる医療です。
目的は、
- 症状が強くなる前に整える
- 不安や混乱が大きくなる前に支える
- 治療を続けやすい状態を保つ
「つらくなってから」ではなく、「つらくならないように」
これが早期緩和ケアの発想です。
誤解②「治療をやめること・切り替えること」
「緩和ケアに切り替えると言われた」
この言葉に、強いショックを受けた方も多いと思います。
ですが、本来の緩和ケアは“切り替え”ではありません。
緩和ケアと治療は両立できる
- 抗がん剤治療を受けながら
- 手術や放射線治療を続けながら
- 主治医の治療方針と並行して
同時に行う医療です。
緩和ケアは、
- 痛みや吐き気などの身体症状
- 不安、落ち込み、眠れないといった心のつらさ
- 仕事や家族のことなど生活上の悩み
を扱い、
治療そのものを支える役割を担います。
「治療をやめる=緩和ケア」ではありません。
治療を続けるために必要な医療でもあるのです。
誤解③「まだ早い」「今は必要ない」
主治医から
「緩和ケアを受けるのはまだ早いですね」
と言われた経験のある方もいるかもしれません。
ただし、ここで知っておいてほしいのは、
「まだ早い」という言葉は、
必ずしも「必要ない」という意味ではない
ということです。
なぜ「早期」が重要なのか
早い段階から関わることで、
- 症状が悪化しにくくなる
- 不安が強くなりすぎない
- 治療や生活の意思決定がしやすくなる
といったメリットが報告されています。
緩和ケアは
余命が短くなってから始める医療ではありません。
「今は大丈夫だから」ではなく、
「今だからこそ整えられることがある」
それが早期緩和ケアです。
早期からの緩和ケアは「特別な人の医療」ではありません
- がんと診断されたばかりの方
- 治療に不安を感じている方
- 主治医には聞きにくいことがある方
- 症状は軽いが、心がつらい方
こうした方々も、対象になります。
緩和ケアは
「弱い人のための医療」でも
「最後の医療」でもありません。
その人らしく治療と生活を続けるための医療です。
まとめ
早期からの緩和ケアについての誤解を整理すると、
- 症状が出てから受けるものではない
- 治療をやめることではない
- 「まだ早い」は必ずしも正しくない
この3点に集約されます。
もし、
- 誰にも相談できずに悩んでいる
- 情報を調べすぎて不安が強くなっている
- 主治医以外の視点を一度聞いてみたい
そんなときは、
早期からの緩和ケアという選択肢があることを、
ぜひ思い出してください。



















