緩和ケアにかかっていたのに、がんが完全に治ることはある?
結論からお伝えします。
あります。しかも、決して珍しい話ではありません。
緩和ケア外来というと、
もう治療ができない人が行くところ
病状がかなり進んでから受診するところ
最後の場所
そんなイメージを持たれがちですが、実際の臨床は少し違います。
実際にあった「緩和ケア卒業」のケース
当院の緩和ケア外来には、
がん治療後の再発不安が強い方
検査結果が出るまで眠れない方
「本当にこのままで大丈夫なのか」と頭から離れない方
が、少なくありません。
そうした方の中には、
主治医の治療がうまくいき
定期検査でも再発がなく
心身の不安も落ち着き
結果として、がんが根治し、緩和ケア外来を「卒業」していく方が実際にいらっしゃいます。
また長期に寛解状態で、病状の進行が緩やか、あるいは停止している方もおられます。
緩和ケアに通ったから治った、という話ではありません
ここは大切な点なので、はっきり書いておきます。
緩和ケアが、がんを直接治すわけではありません。
がんを治したのは、
主治医による手術・抗がん治療・放射線治療など、適切な標準治療です。
ではなぜ、緩和ケアに通っていた人が「治って卒業する」ことがあるのでしょうか。
緩和ケアが果たしている、もう一つの大切な役割
緩和ケア外来では、
不安や恐怖が強すぎて生活が乱れている
情報を調べすぎて眠れない
「悪い想像」ばかりが頭を占めてしまう
こうした状態を、医学的に整えていきます。
不安が落ち着くことで、
治療を最後まで続けられる
体調管理が安定する
主治医とのコミュニケーションが良くなる
結果として、本来得られるはずの治療効果を、きちんと受け取れる状態になるのです。
「緩和ケア=終わり」ではありません
緩和ケア外来に通っていて、
治療が順調に進み
不安が軽くなり
もう緩和ケアが必要なくなる
これは失敗でも後退でもありません。
むしろ、
「役目を終えて卒業できた」という、とても良い経過です。
迷っている方へ
いまは症状が軽い
でも不安が強い
このまま治療を続けていいのか迷っている
そういう時期に、緩和ケア外来を利用することは、決して早すぎません。
そして、
緩和ケアに通った結果、がんが治り、外来を卒業する人が実際にいる
――これは事実です。
最後に
緩和ケアは、
「治らないときの医療」ではありません。
「治る可能性を、きちんと活かすための医療」でもある。
そのことを、知っていただければと思います。




















