緩和ケアに行くと、もう治療は受けられなくなるの？ ──それは最も多い誤解です

「緩和ケアに行く＝治療は終わり」だと思っていませんか？

がんの患者さんやご家族から、非常によく聞かれる質問があります。

「緩和ケアに行ったら、
もう抗がん剤や治療は受けられなくなるんですよね？」

結論からお伝えします。

それは誤解です。

緩和ケアに行ったからといって、
治療が中止されることはありません。

なぜ「治療ができなくなる」と思われてしまうのか

この誤解が広まった背景には、いくつかの理由があります。

• かつて緩和ケアは「終末期医療」として扱われることが多かった

• 「緩和ケアに切り替える」という言葉が使われてきた

• 入院型のホスピスのイメージが強い

これらが重なり、

緩和ケア＝治療をやめる
緩和ケア＝最期の段階

という印象が定着してしまいました。

しかし、現在の緩和ケアは全く違います。

今の緩和ケアは「治療と並行する医療」

現在の医学では、緩和ケアは次のように位置づけられています。

• がん治療と同時に受ける医療

• 病気の進行度に関係なく受けられる

• 痛み・不安・生活のつらさを軽くする専門医療

実際、

• 抗がん剤治療を受けながら

• 放射線治療を続けながら

• 手術後の経過をみながら

緩和ケア外来に通っている方は非常に多いです。

緩和ケアは「治療をやめさせる場所」ではありません

緩和ケアの役割は、

• 治療の邪魔をしない

• 主治医の判断を否定しない

• 患者さんが治療を続けやすくする

ことです。

たとえば、

• 副作用がつらくて治療を続けられるか不安

• 不安や恐怖で夜眠れない

• 治療の説明が頭に入らない

こうした状態では、治療そのものが続けにくくなります。

緩和ケアは、
治療を続けるための「土台」を整える医療です。

「緩和ケアに切り替える」という言葉の問題点

今でも医療現場では、

「次は緩和ケアに切り替えましょう」

という表現が使われることがあります。

ですが、これは本来正確ではありません。

正しくは、

• 治療に緩和ケアを追加する

• 治療の軸足を調整する

という意味で使われていることが多いのです。

言葉の印象だけで、
「治療が終わった」と受け取ってしまう方が少なくありません。

実際に多いケース

現場では、次のような組み合わせがごく普通です。

• 抗がん剤治療 ＋ 緩和ケア外来

• 治療継続 ＋ 痛みや不安の専門的サポート

• 主治医 ＋ 緩和ケア医の二人体制

この体制によって、

• 治療を途中で断念せずに済んだ

• 生活の質が保たれた

• 気持ちが落ち着き、判断ができた

という方も多くいらっしゃいます。

「今はまだ早い」と感じている方へ

緩和ケアは、

• 治療が尽きた人のためのもの

• 覚悟を決めた人だけが行く場所

ではありません。

むしろ、

• 治療中で迷っている

• 不安が強くなってきた

• このままでいいのかわからない

そう感じ始めた時点が、相談のタイミングです。

まとめ

• 緩和ケアに行っても、治療は続けられる

• 治療と緩和ケアは対立しない

• 緩和ケアは「治療を支える医療」

「もう治療は受けられなくなるのでは」という不安は、
多くの方が抱く、ごく自然な気持ちです。

ですが、
一人で思い込んでしまう必要はありません。

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