――あなたが間違っているわけではありません
がんと診断され、治療の話が進み始めると、
多くの方が “家族との意見の違い” に直面します。
- 家族は「もっと積極的な治療を」と言う
- 自分は「今の生活を大切にしたい」と思っている
- 周囲は善意だけど、気持ちが追いつかない
こうしたズレは、とてもよくあることです。
家族が強く意見を言うのは、珍しいことではありません
家族が治療に口を出してくると、
「自分の気持ちを分かってもらえない」と感じる方もいます。
でも多くの場合、家族の背景には
- 何かしなければという焦り
- 後悔したくないという恐怖
- 大切な人を失う不安
があります。
善意だからこそ、強くなる。
ここが一番つらいところです。
「誰の治療か」を見失ってしまうとき
治療の話し合いが進むほど、
いつの間にか主語が変わってしまうことがあります。
- 「家族が納得する治療」
- 「周囲に説明しやすい選択」
でも本来、がん治療は
その人の人生の一部です。
体を引き受け、
副作用を受け止め、
日々を生きていくのは――
あなた自身です。
意見が合わない=関係が壊れている、ではない
家族と意見が合わないと、
「わがままなのでは?」
「冷たい人間なのでは?」
と自分を責めてしまう方もいます。
でも、意見が違うことと、愛情がないことは別です。
むしろ、
真剣に考えているからこそズレが生じる。
それは自然なことです。
緩和ケアができる「間に入る役割」
こうした場面で、
早期からの緩和ケアが力を発揮します。
緩和ケアは
「治療をやめる場所」ではありません。
- 患者さんの気持ちを言語化する
- 家族の不安を整理する
- 主治医との話し合いを補助する
いわば、感情と医療の通訳のような役割です。
直接ぶつかるとこじれやすい話題も、
第三者が入ることで
驚くほど整理されることがあります。
「自分の気持ちが分からなくなった」ときこそ相談を
家族の意見を聞き続けるうちに、
「自分が何を望んでいるのか分からなくなった」
そう感じる方も少なくありません。
それは、あなたが弱いからではありません。
それだけ状況が複雑なのです。
決断する前に、整理する時間を取っていい。
それが、後悔しない選択につながります。
最後に
がん治療で、家族と意見が合わないとき。
それは「誰かが間違っている」サインではありません。
- 立場が違う
- 見えているものが違う
- 怖さの種類が違う
ただそれだけです。
あなたの気持ちを中心に据えながら、
家族とも折り合いをつけていく。
そのための支援が、早期からの緩和ケアにはあります。













