緩和ケアと余命は、どういう関係にあるのでしょうか
「緩和ケア」と聞くと、
多くの方が同時に「余命」という言葉を思い浮かべます。
余命を告げられたあとに、
「もうできることはないのではないか」
「これ以上治療をしても意味がないのでは」
そう感じてしまう方も少なくありません。
ですが、緩和ケアは
余命を決める医療ではありません。
緩和ケアは「寿命の話」をするための医療ではありません
緩和ケアの目的は、
・痛み
・息苦しさ
・不安
・眠れなさ
・気持ちの揺れ
こうしたつらさを和らげることです。
余命が長いか短いかに関わらず、
つらさがあるなら、緩和ケアの対象になります。
つまり、
余命があるから緩和ケアを受ける
のではなく
つらさがあるから緩和ケアを受ける
という順番です。
そのため、巷で言われるような、緩和ケアになったから余命は◯か月のような話は実は成立しません。
緩和ケアを受けていて治る人もいれば、告げられた余命よりももっと長く生存される方もおられるため、
一概には言えないのです。
ただ印象として、予測されていたより長く元気に生活されている事例が多いということは実感として持っている緩和ケアの医療者は多いです。
「余命を告げられたあと」に起きやすいこと
余命の話が出たあと、
多くの方が次のような状態になります。
- 何を考えても頭が回らない
- ネット検索ばかりしてしまう
- 家族にどう話していいかわからない
- 不安で夜眠れない
こうした状態そのものが、
すでに「支えが必要な状態」です。
緩和ケア外来では、
症状の調整だけでなく、
こうした気持ちの整理を一緒に行うことも大切にしています。
緩和ケアを受けると、何が変わるのか
緩和ケアを受けることで、
- 痛みや不安が軽くなる
- 生活のリズムが整う
- 考えが少し整理される
- 「今できること」に目が向く
こうした変化が起こることがあります。
その結果として、
治療を続けられる状態が整ったり、
日常生活が安定したりすることもあります。
緩和ケアは、
「何もしない医療」ではなく、
「今を支える医療」です。
余命があるからこそ、緩和ケアが役に立つこともある
余命の話が出ると、
「もう我慢するしかない」と思ってしまう方もいます。
ですが、
我慢することと、耐えることは違います。
つらさを一人で抱え込まず、
早い段階から緩和ケアを利用することで、
残された時間を「苦しい時間」ではなく
「過ごせる時間」に変えていくことができます。
緩和ケア外来という選択肢
入院やホスピスだけが、
緩和ケアではありません。
外来で、
・定期的に話をする
・症状を調整する
・不安を整理する
そうした関わり方もあります。
「今すぐ入院するほどではない」
「でも、この不安を誰かに聞いてほしい」
そんなときに、
緩和ケア外来は利用できます。
緩和ケアで余命がわかるとき
緩和ケアの医療者は、例えばがんの場合、
科学的根拠に則った予後予測のスコアはしっています。
PaP scoreやPPIというものです。
患者さんの状態やデータを数値化することで、
一定の精度がある、残り時間の目安を出すことができます。
ただし大きな注意点があります。
一つにそれは絶対ではないということ。
それから外れることは決して珍しくありません。
そしてもう一つ重要な注意点があります。
それは、余命が数週間くらいとなると、そのような数値化の制度が高くなります。
つまり何か月以上余命があるという場合に、それを予測するのは困難です。
緩和ケアに行った、などと聞いた方が数年生存しておられるとか、
余命が半年と言われた方が数年生きられるということが珍しくないのは、
そもそもそのような中長期的な予後予測は不可能であるということ、
緩和ケアに行ったから余命はこれくらいと予測できないということ、
それが現実として存在するからです。
最後に
余命を告げられたあと、
何を考え、どう過ごすかは人それぞれです。
ただ一つ言えるのは、
つらさを我慢し続ける必要はないということ。
緩和ケアは、
「終わりの医療」ではなく、
「今を支える医療」です。
もし迷いがある場合は、
一度立ち止まって、話をしてみるだけでも構いません。
早期からの緩和ケア
当院では、
早い段階からの緩和ケア外来相談を行っています。
「相談していいのか迷っている」
「まだ決めきれない」
その状態のままで大丈夫です。
必要なときに、必要な分だけ関わることができます。




















