――治療をやめるという意味ではありません
「そろそろ緩和ケアに切り替えましょう」
主治医からこう言われて、
頭が真っ白になった、という方は少なくありません。
治療はもうできないという意味?
見放されたということ?
もう終わり、という宣告?
そう受け取ってしまうのも、無理はありません。
ですが、実はこの言葉、医学的には正確ではないことが多いのです。
「緩和ケアに切り替える」は、正確な表現ではありません
本来、緩和ケアは
がん治療と並行して行う医療です。
抗がん剤治療
放射線治療
手術
と対立するものではありません。
つまり、
👉 緩和ケア=治療をやめる
👉 緩和ケア=終末期医療
ではありません。
海外の研究や、現在のがん医療の考え方では、
診断時から緩和ケアを併用することが推奨されています。
それでも日本では、
「治療が難しくなった段階で初めて紹介される」
という運用が多いため、
結果として
「切り替える」という言葉が使われてしまうのです。
では実際、何が変わるのでしょうか
「緩和ケアに切り替える」と言われたあと、
多くの方が体験する変化は、次のようなものです。
① 診察で扱うテーマが変わる
検査数値や画像中心 → 生活・つらさ・不安中心
「次の治療」→ 今をどう過ごすか
② 話していい内容が増える
痛みや息苦しさ
不安、怖さ、迷い
家族のこと、仕事のこと
「本当はどうしたいか」
これらを遠慮なく話していい場所になります。
③ 治療を「どう終えるか」ではなく
「どう支え続けるか」に軸が移る
治療が続いている場合でも、
その治療をどう受けるか、どう付き合うかを一緒に考えます。
治療が続くことも、珍しくありません
緩和ケアを並行して受けたからといって、
抗がん剤が即中止になる
病院に通えなくなる
というわけではありません。
実際には、
治療を続けながら緩和ケアを受ける方
治療は休みつつ、体調を整える方
状況を見ながら再開を検討する方
など、選択肢は複数あります。
緩和ケアは
「治療をやめさせる医療」ではなく、
選択肢を整理し、支える医療です。
「切り替え」と言われたときに大切なこと
もし主治医から
「緩和ケアに切り替えましょう」と言われたら、
すぐに結論を出す必要はありません。
むしろ、
何ができて、何ができなくなったのか
何を一番大切にしたいのか
いまの生活で困っていることは何か
こうしたことを
落ち着いて整理する時間が必要です。
そのために、緩和ケアがあります。
まとめ
緩和ケアは「終わり」ではなく「支え方が変わるだけ」
緩和ケアは、本来「切り替える」ものではない
治療と並行して行う医療
生活・気持ち・意思決定を支える
治療が続くことも多い
「緩和ケアに切り替える」と言われたとき、
それは見放された合図ではありません。
むしろ、
これからを一緒に考える段階に入った
というサインであることも多いのです。
もし言葉の重さに戸惑っているなら、
一度立ち止まって相談してみてください。














