家族のほうが先に「限界」を感じていることは少なくありません
がんの患者さんを支えるご家族から、よく聞く声があります。
本人がつらそうなのに、何も言えない
不安そうだけど、触れてはいけない気がする
緩和ケアの話を出したら、希望を奪ってしまいそう
そして最後に、こう思ってしまう。
「どう伝えればいいかわからないから、黙っていよう」
実は、家族のほうが先に限界を感じているケースは非常に多いのです。
まず知っておいてほしい大前提
緩和ケアを勧めることは、
治療をあきらめさせること
気持ちを折ること
死を意識させること
ではありません。
本来は、
つらさを軽くする選択肢を増やすこと
本人を一人にしないこと
家族だけで抱え込まないこと
です。
この前提を、まず家族自身が持つことが大切です。
うまくいかない伝え方(よくある例)
善意から、こんな言葉を使ってしまうことがあります。
「もう緩和ケアにしたほうがいいんじゃない?」
「治療はもう十分頑張ったよ」
「先生もそろそろって言ってたし…」
これらは事実でも、
本人には「見放された」「決めつけられた」と感じられることがあります。
大切なのは「勧める」より「共有する」
緩和ケアを話題にするとき、
目指すのは説得ではありません。
「一緒に考える」姿勢です。
たとえば、こんな言い方があります。
「最近、あなたがつらそうに見えて心配で…」
「私だけじゃ支えきれない気がして、不安なんだ」
「相談できる先生がいたら、少し楽になるかもしれないと思って」
主語を「あなた」ではなく、
「私」にすることがポイントです。
「緩和ケア」という言葉を使わなくてもいい
最初から「緩和ケア」という言葉を出す必要はありません。
むしろ、次のような入口のほうが自然です。
「痛みや不安を専門にみてくれる先生がいるらしいよ」
「治療とは別に、話を聞いてくれる外来があるみたい」
「主治医とは違う立場の医師に相談できるみたい」
名前よりも中身を先に伝えるほうが、受け入れられやすいことが多いです。
タイミングは「落ち込んだとき」ではない
伝えるタイミングも重要です。
検査結果直後
気持ちが沈んでいるとき
体調が極端に悪いとき
こうした場面では、
新しい話は受け止めきれません。
比較的落ち着いているときに、
短く、重くならない形で触れるのがコツです。
「決めなくていい」ことを明確に伝える
多くの患者さんが怖いのは、
「一度行ったら、戻れなくなるのでは?」
という不安です。
そのため、必ずこう添えてください。
「すぐ決めなくていいよ」
「話を聞くだけでもいいみたい」
「合わなければやめればいいし」
選択権は本人にあることを、言葉で示すことが大切です。
家族だけで背負わなくていい
忘れないでほしいのは、
家族が正解を知っている必要はない
家族が全部支えきる必要もない
ということです。
緩和ケアは、
患者さんのためだけでなく、家族を支える医療でもあります。
まとめ
勧めるより「共有する」
主語は「私」で伝える
決断を迫らない
選択肢を増やすという姿勢
「どう伝えればいいかわからない」と悩むこと自体が、
すでに大切に思っている証拠です。
















